好きのツボがわかると景色が変わる──興味の解像度をあげるリフレクションの技法
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好きのツボがわかると景色が変わる──興味の解像度をあげるリフレクションの技法

本記事は、安斎勇樹著『静かな時間の使い方──自分の解像度を上げる「独りの思索」の全技法』(朝日新聞出版)から一部エッセンスをお届けしています。『静かな時間の使い方』をAmazonでみる

外部環境の変化が激しいほどに、その状況を捉え、対処する必要に迫られます。
すると人は自らの内面に向き合う時間がとれなくなってしまいがちです。しかし、本来はそういうときにこそ、「自分は何を大事にしているのか?」「どういう欲をもっているのか?」などを言語化し、自身の感情や欲望の解像度をあげておくことが、行動の指針につながります。

この記事では「好き」や「面白い」といった自分の興味の傾向をつかみ、言語化する興味のリフレクションの技法を深めます。

1. 探究テーマを見つけると景色が変わる

自分がつい深掘りしてしまうような興味の対象=「探究テーマ」を持っていると、世の中の見え方が変わります。流れてくるニュースやなにげない同僚の一言や職場での出来事も、「これは自分のテーマとつながるかもしれない」というアンテナに引っかかりはじめ、同じ日常なのに、拾える情報の解像度が上がっていくのです。
では、その出発点になる「自分の興味」は、どのようにすれば掴めるのでしょうか。

前提として確認しておきたいのは、これは意欲や能力の問題では片付けられないということです。人は誰しも生まれたときから好奇心を持っています。好奇心をもつ能力がないわけではなく、自然に周囲へ好奇心を向けていたはずです(赤ちゃんの記憶はないにしても)。

しかし、成長するにつれてだんだんと、好奇心が向くものと、興味を示さないものが分かれ、その傾向にも個人差が生まれてくるのです。

大人になってみると、自分の興味が言葉になっていないケースも少なくありません。特に仕事においては「あなたの業務の好みのタイプは?」「どんな興味のツボがありますか?」と聞かれることは一般的ではないでしょう。「何をやりたいか?」を問われたときに言葉に詰まってしまったり、自分自身にはなんとなく好みの業務があったとしても、それを口外しにくかったり。「なぜ好きなのか」を言語化する機会は、意外と少ないのではないでしょうか。

さらに「私たちを縛る『ソーシャルノイズ』の正体」にあるように、現代を生きる私たちの内発的な動機は、規範・スコア・空気といった外圧によっても抑圧されがちです。だからこそ静かな時間を確保し、まだ言語化されていない自分の「面白さのツボ」をリフレクションを通じて探っていく必要があります。

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2. 興味の「レンズ」を言語化する

では、自分の興味はどのように捉えていけるでしょうか。
安斎は、興味を「対象」と「レンズ」に分解してリフレクションすることをすすめています。

言語化力を高めたければ、自分の「興味のレンズ」を熟知すべし(安斎勇樹 note)

「◯◯に興味がある」というとき、多くの場合は「対象」が語られがちです。
しかし、実は対象だけでは自分らしい興味というのはなかなか見えてきません。対象そのもの以上に、「どんな切り口でその対象にひかれているのか」「どういう角度から捉えるのか」=興味のレンズにその人のオリジナリティや個性はあらわれてきます。

興味のレンズは、さらに3つにわけて検討してみるのも有効です。

学生時代などに触れていた学問やよく読む書籍が依拠する学問などに、物の見方は強く影響を受けることがあります。あなたには、ついそのようなもの見方をしてしまう、馴染んでいる物の見方をしている学問的なレンズはあるでしょうか。普段意識せずとも、工学的、経済学的、心理学的、社会学的などの見方に、案外影響を受けているものです。
また社会人として働いて来た方は、職業経験やその中で培った専門性にも影響を受けているでしょう(職能的レンズ)。そして、どんな人でも必ずもっているのは趣向的レンズです。他の人は気にしないような小さなこだわりや、時間の制約があるにもかかわらずついやってしまうこと、あるいは周りは平気そうでも自分はどうしても萎えてしまうことなどにも、自分だけの興味の源泉が隠れているかもしれません。

興味のリフレクションとは、このような自分だけのレンズを掘り当てる作業だとも言えます。

3. 興味の「活動スタイル」8タイプ

もう一つ、別の角度からリフレクションするフレームをご紹介します。

これは興味の対象やレンズを考えるのではなく、対象に「どのように関わっているときに興味が湧くか」「どのような目的の活動に面白さを感じるか」という視点です。

大まかには、次の4つのスタイルに分類できます。

  • 創造タイプ──新しく、何かを生み出すことに興味がある
  • 解明タイプ──調べて、原因や原理を明らかにすることに興味がある
  • 介入タイプ──現実に働きかけて、変化させたり解決したりすることに興味がある
  • 運用タイプ──決められた手順にしたがって正しく回して、安定させることに興味がある

これに、もう一つ重要な軸が「ヒト」に興味がわきやすいタイプか、「コト」に興味がわきやすいタイプかです。

アメリカのキャリア心理学者のプレディガーは、「どんな仕事に興味が湧くか」の傾向を「People(人々)」と「Things(物事)」の軸で整理しています*1。完全にどちらか一方だけ、ということではないと思いますが、多くの場合はどちらかに偏っているのではないでしょうか。

これが現在の職業に反映されているケースも多いと思われます。
ただ、人事の人が必ずしも「ヒト」に興味がわきやすいタイプとは限りません。マネジャーなどの役割についても、もしかすると現在の仕事や役割で求められることと、興味がわきやすいタイプの不一致により苦労しているケースもあるかもしれません。

先ほどの興味の4つのスタイルと、「ヒト」「コト」のどちらに興味がわきやすいかをかけ合わせると、8つの活動スタイルが見えてきます。

自分のスタイルはどこか、現在の業務は何が求められているか、それは興味と合致しているかなどをリフレクションしてみるときっと発見があるでしょう。

4.「興味」は段階的に育つ。好奇心と興味の違い

私たちは「好奇心」と「興味」をほぼ同義に使いがちですが、実は、心理学ではこの2つは異なる概念だとされています。

好奇心(curiosity)は、知らないことや奇妙な現象に出会ったときに「何だろう?」と湧き上がる、一時的で瞬発的な感情です。対象を好きでなくても湧いてくるのが特徴で、わからなさを解消したい、「知りたい」という衝動を指します。

興味(interest)は、特定のテーマに惹きつけられ、「好き」「面白い」というポジティブな感情が、一定期間にわたって持続して定着した状態です。多くの好奇心は「わかった」瞬間に解消するものですが、好奇心に基づいて調べているうちに、だんだん好きになっていくこともあるでしょう。

両者の関係を捉えるうえで参考になるのが、教育心理学者のヒディとレニンガーによる「興味発達の4段階モデル」です *2。彼らは、興味が次の段階を経て育っていくと整理しました。

  1. 誘発された状況的興味
  2. 維持された状況的興味
  3. 芽生えた個人的興味
  4. 成熟した個人的興味

ここで注目したいのは、興味は段階的に成長する、ということです。

第1段階や第2段階は、外部からの刺激や情報に影響を強くうけます。TVやSNSで話題になっていたり、友人が話していたことなど。きっかけはどのような形からでも、それが育っていくことはあります。一方で、どのような興味でも第3段階や第4段階に至るわけではなく、多くは第1段階、第2段階で消えていくでしょう。

興味のリフレクションをする視点では、第3段階に着目してみるのがおすすめです

「自らが主体的に調べた」ような興味は、なんらか自分独自の「好きのツボ」にヒットしている可能性が高いからです。同じように、一時的には興味をもっていたけれど、第2段階で飽きてしまったものにもヒントがあるかもしれません。
なぜ、それらは第3段階には至らなかったのでしょうか。その原因や傾向、その時の自分の体感などをぜひ振り返ってみてください。

5. 興味は、探究の「入り口」になる

こうして言語化された興味を、ぜひ自分だけの「探究テーマ」として言語化してみましょう。CULTIBASEでは、探究を「自分と世界のよりよいつながり方を発見すること」と捉えています。興味のリフレクションはその出発点の1つです。

探究テーマは、自分の興味のレンズと対象をつなぐ、探究の方向性を示した「問い」のことです。具体的に疑問文で定めることもあれば、キーワードやコンセプトとして掲げておくのもよいでしょう。ソーシャルノイズから少し距離をとり、じっくりと興味をリフレクションし、自分の「好き」の正体を言葉にして、掴んでみてください。

また、探究の入り口は「興味(テーマ設定)」だけではありません。本を読むといった「知る活動」からスタートすることも、まず手を動かし実践するような「創る活動」からの方が取り組みやすいこともあるかもしません。

あなたの「探究」はどこから?4つのタイプでわかる探究のはじめかた(CULTIBASE note)

どのようなルートからも、興味を深める「探究」を進めていくことができます。
ただ、いずれかのタイミングでは一度じっくりと興味のリフレクションに取り組み、自分の興味の解像度をあげることが、探究を進める鍵になるでしょう。

本記事で紹介した「興味のリフレクション」の技法を参考に、ぜひ自分と世界のよりよいつながり方に向き合ってみていただければと思います。


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