VUCA時代の組織はなぜストレスフルなのか?:慢性的な“わからなさ”の影響を捉え直す

VUCA時代の組織はなぜストレスフルなのか?:慢性的な“わからなさ”の影響を捉え直す

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約6分

組織をつくる

#組織文化
#ナレッジマネジメント
舘野 泰一
舘野 泰一

私たちを取り巻く環境の複雑さが増す現代において、すぐには答えが出せずに投げ出したくなるような「ややこしい問題」で溢れています。

指数関数的なテクノロジーの発展や、働き方の多様化、個人の生き方や価値観の急速な変化の真っ只中で、日々漠然とした不安を抱えている人も多いのではないでしょうか。

こうした不安は「自分はこのままでよいのか」「将来どのように生きるべきか」といった自身に関するものから「環境問題」「ウイルスとの共生」といった社会の状況までさまざまです。このような問題は様々な変数が複雑に絡み合い、簡単には答えがでないため学術的には「厄介な問題(Wicked Problems)」と表現されます。

「厄介な問題」の背景には、複雑で将来の予測が困難な「VUCA(ブーカ)」と呼ばれる外部環境があります。「VUCA(ヴーカ)」とは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)4つの単語の頭文字を取った言葉で、元々は軍事用語でしたが近年になってビジネスの外部環境の様相を説明する言葉として普及しています。具体的には以下のような状態を指します。

Volatility(変動性)

変動性とは、これからどのような変化が起こるのか予測が難しく、変動が激しい状態と言えます。IT技術の進歩や人々の価値観の多様化など、さまざまなものごとが急速に変化する状況を指します。

Uncertainty(不確実性)

不確実性とは、環境がどう変化していくのか分からない状態と言えます。たとえば、雇用環境の大きな変化や、新型コロナウイルスの流行による社会の変化など、現代は予測困難なことが多く、不確実な事象に対しての対応力が求められています。

Complexity(複雑性)

複雑性とは、さまざまな要素が複雑に絡まり、単純な解決策を導き出すことが難しい状態を指します。社会情勢や経済環境、技術革新、価値観など現代にはさまざまな要素が存在し、互いに影響を与え合っていると言えます。

Ambiguity(曖昧性)

曖昧性とは、解釈の可能性が複数ある状態を指します。要素が複雑に絡み合うことにより、因果関係がわからなかったり、前例のない状況が発生したりする中で「こうすれば確実に解決できる」と断言することはできません。絶対的な解決策がない状況と言えます。

VUCAの4つの要素をシンプルに表現すると「わからなさ」。これらの変数を「V&U」と「C&A」に分けると、「未来のわからなさ」と「現在のわからなさ」に大別することができます。

V&U〜未来のわからなさ〜

Volatility(変動性)とUncertainty(不確実性)は、外部環境が目まぐるしく変化し、先行きの見通しが立たない、すなわち「この先どうなるのかわからない状況」につながります。いわば「未来のわからなさ」です。

C&A〜現在のわからなさ〜

Complexity(複雑性)とAmbiguity(曖昧性)は、今目の前で起きている事象の要因が複層的で、何が起こっているのか、なぜそれが起きているのかがわからないという状況につながります。いわば「現在のわからなさ」です。

VUCAが生み出すストレスフルな状況とは?

このように、今何が起きているのかわからず、この先どうなるのかもわからないような状態に置かれると、「どうすればうまくいくのかわからない」という問題解決における根源的な悩みに行き着きます。こうして漠然とした閉塞感や焦燥感だけが残されたまま、目の前の問題の輪郭すらつかめない状態が私たちのストレスの源となっています。

人間はわからなさだらけのストレスフルな状況に立たされると、今度は「自分が何をしたいのかわからない」という内なる「感情のわからなさ」に悩まされるようになります。

頑張ってもうまく行くかわからない、という「未来のわからなさ」に加え、そもそも何を頑張ればいいかわからないという「現在のわからなさ」も相まって、次第に人は無気力になり内的な欲求そのものを忘れてしまいがちです。

さらにVUCAは私たちのリソース(人手、物資、予算、時間等)を慢性的に枯渇させます。これにより考えるための精神的余裕と体力が奪われ、ますますわからない状況が悪化してく、という構造に陥ります。

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感情のパラドックスとは?

こうした”厄介な問題”に、対処する一つのヒントとして「感情のパラドックス」について紹介します。

現実社会における「厄介な問題」は、外部環境のわからなさの中で発生する感情のパラドックスによって起こります。感情のパラドックスとは、問題の背後に矛盾する「主張A」と「主張B」が存在し、どちらかの感情を優先すると納得のいく答えが出せなくなるような状態を指します。

たとえば、会社や組織に縛られずに「自由に働きたい」という感情と、会社のサポートを受けつつ「適度に管理されたい」という矛盾した感情を持つ人もいるのではないでしょうか。

このような感情のパラドックスは、簡単には両立し解消することは難しいものの、問題の背後にある「矛盾した感情」を認識することで、単に「独立する」だけでは心から納得がいく解決策を得られないとの気づきを得ることができます。

矛盾する感情のどちらかを「正」として優先するのではなく、まずはこの感情パラドックスを発見し、受け入れることで焦る気持ちが落ち着き悩みが緩和されます。2つの感情を見つけ出すことが「厄介な問題」に立ち向かうための第一歩なのです。

安斎勇樹と舘野泰一による最新刊『パラドックス思考 ─ 矛盾に満ちた世界で最適な問題解決をはかる』では、誰しもが抱えうる矛盾した感情を受容し、手懐け、創造的な問題解決に活かすための理論や方法を体系化しています。

日々漠然とした不安を抱えている方、相反する欲求をどう扱えば良いか悩んでいる方などへのヒントとなるのではないでしょうか。ぜひご一読ください。

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