深いリフレクションのための2つのアクション:連載「リフレクションの技法」第3回
深いリフレクションのための2つのアクション:連載「リフレクションの技法」第3回

深いリフレクションのための2つのアクション:連載「リフレクションの技法」第3回

2022.05.18/6

企業内、教育現場、その他多くの分野で、自分たちの活動をふり返ることで学びを得ようとする所謂「リフレクション」という活動が実践されています。しかし、せっかく時間をかけて活動をふり返っても次に活かされないなど、うまくいかない「リフレクション」を経験したことがある方も少なくないのではないでしょうか。

本連載ではリフレクションの本質とは何なのか、背景にある理論を整理し、意味のあるリフレクションを実践するためのポイントを紹介していきます。特に、チームにおけるリフレクションの活用を軸に、チームの中の個人、そしてチームが属する組織へもたらす影響について触れていきます。

第3回目となる今回のテーマは「リフレクションの方法」です。このリフレクションの技法の連載では、第1回第2回と比較的理論背景に触れてきましたが、実際のリフレクションの実践方法について本記事では触れていきます。リフレクションの実践方法を大きく2つに分類しながら、未来に活きるリフレクション実践のエッセンスに迫っていきます。

リフレクションの意義:一度立ち止まって、自分と向き合う時間をつくる

仕事で自分が関わったプロジェクトについて、なんとなくうまくいったと感じたり、逆にうまくいかなかったという感覚はあっても、自分の取り組み方のどこがよかったのか、あるいはよくなかったのか、明確にわかっていることは少ないものです。プロジェクトの真っ最中は、自分の仕事をやることに精一杯になっているため、自分自身やプロジェクトメンバーの行為の一つひとつがどのように関係しあってプロジェクトが進行しているのか、把握しきることは困難です。

そうした中で、リフレクションする対象となる出来事について、事実として何があったのかを思い返し、そのときの自分の思考や感情と向き合う時間をつくることが、リフレクションの意義となります。経験した出来事を一人称視点でふり返っていくことで、自分の行為に一体どんな意味があったのか、自分自身で気づくことができるのです。

またリフレクションは、プロジェクト終了後に行うものだと思われていることが時折ありますが、中・長期的に続くプロジェクトの場合は、それ以降のプロジェクトに意味のある気づきを得られるため、途中でも一度立ち止まってリフレクションを行うことも効果的です。

リフレクションの2つの方法:「経験の記述」と「対話の活用」

リフレクションのやり方は、さまざまな方法がありますが、大きく「経験の記述によるリフレクション」と「対話によるリフレクション」に分けて捉えることができます。

まず、経験したことの事実関係を整理し、思考整理するために「経験の記述によるリフレクション」が有効です。その後、その経験にはどのような意味が合ったのか、経験の解釈を深めていくために「対話によるリフレクション」が役立ちます。

これら2つの活動は、どちらか一つを行うだけでも効果的ですが、組み合わせて順番に行うことで、より深い学習効果を生み出せます。次項より具体的な方法について解説しますので、ぜひ併せて実践してみてください。 

アクション(1):経験の記述によるリフレクション

自分で自分自身がやったことの意味に気づいていくための最初の一歩として有効な方法が、経験の記述によるリフレクションです。経験の記述によるリフレクションは、文字通り個人で自分自身の行ってきた経験をふり返り、言語化し記述していきます。具体的なやり方としては、リフレクションをする項目や問いを用意し、それに対する答えを短文や箇条書きで記述していくものや、リフレクションのテーマを決め、そのテーマに関する経験を文章で記述していくものなど、さまざまな方法があります。

経験を文章で記述していく方法では、最初に経験全体を広く浅く記述していきながら、特に心に残っている印象的な場面や、さまざまな思考や感情が複雑に絡み合っていたような場面をピックアップしていく進め方が有効です。特に試行錯誤があったような場面に絞って詳細に記述していく方が、より深く個人の判断の背景にある思考や感情と向き合い、根底にある個人の価値観にまで迫ることができます。

教育学者のマックス・ヴァン=マーネンは、教育現場で判断に迷った中でもその場で瞬時になんとか対応し、切り抜けたような特定の場面のことを「教育的契機」と名づけ、この瞬間について記述し、リフレクションすることを大事にしていました。

経験の記述によるリフレクションでは、個人が経験した生活世界の有り様をありのままに記述することを目指す、現象学的な態度で臨む必要があり、繰り返し実践していくことでその態度が徐々に身についてきます。

経験を言語化すると言うと、語彙力に自信がないから書けないと思ってしまう人もいるかもしれませんが、言葉の表現に凝る必要はありません。まずは、小学生のときに書いたような日記や作文をイメージして出来事をふり返り、その場面において自分が考えていたことや感じていたことを率直に自分の言葉で記述してみることから始めてみましょう。

例えば、プロジェクトを進めるにあたって、日々自分が何をして何を感じていたのかを記録しておくことも、リフレクションに活用できます。毎日や週1回、もしくは特に心が動いた経験をしたときに、自分の行為とそのときの思考や感情をメモに残しておくとよいでしょう。近年は、ジャーナリングのように頭に浮かんだことを思うがままに書き記していく方法も、思考整理に役立つ方法として注目されています。まずは、自分自身の感情を率直に言語化することに慣れていくことが、リフレクションのトレーニングにもつながるのです。

ほかにも、チームで活動をふり返る対話を行うときも、対話を始める前に、個人ワークとして経験を記述するリフレクションの時間を設けることで、一人ひとりがリフレクションに臨む準備を整えることができます。

アクション(2):対話によるリフレクション

経験を記述するリフレクションと合わせて、「対話によるリフレクション」も効果的な方法です。

チームでの活動をふり返るときに、メンバー同士で集まって協同的にリフレクションを行った経験のある方は多いかと思います。

こうしたリフレクションの場においては、単によかったことや、改善点をあげるだけでなく、チームメンバーの一人ひとりがそのときに感じていたことなどを互いに語り合うことが重要です。そのような対話的なコミュニケーションを通して、それぞれが見ていた景色を共有しあい、活動中には互いに共有し合っていなかった内面を開示していくことで、より深い学習やメンバー間での相互理解を得ることができます。

対話によるリフレクションでは、対話においてどのような問いを用意するかが重要です。本連載の第1回で触れたフレット・コルトハーヘンのリフレクション理論であるALACTモデルにおいても、行為のふり返りを行う際にふり返る事象の文脈を深掘りするための「8つの問い」を用意しています。問いの項目は、「行ったこと(doing)」「考えたこと(thinking)」「感じたこと(feeling)」「欲したこと(wanting)」の4つについて、自分と相手の両方の視点で構成されています。

ALACTモデルは教育現場を想定しているため、自分と相手という2者の視点に問いが分かれています。リフレクションの対象とする活動に合わせて、相手の視点を含めるか否かを判断した上で、これらの問いを活用するとよいでしょう。

リフレクションでは、個人の感情と向き合うことが大事と言われますが、「今のあなたの感情は?」や「このときの感情はどうだった?」などと直接的に問われて、自分の感情をありのままに答えることは容易ではありません。そこで、思考や感情など個人の内面に迫っていくためには、問いかけ方を工夫しながら対話を進めることが必要です。

例えば、特に印象に残っている出来事について問うたり、特に苦労したことや逆に特に力を入れて取り組んだことを問うといった、直接的に個人の感情を問うのではなく、自然と個人の行為の中に隠れている試行錯誤に関わる行為と思考、感情を引き出していく問いかけ方が効果的です。

ここまで、対話によるリフレクションの一般的な活用場面として、チームの活動をチームでふり返ることについて解説を行ってきました。しかし、対話によるリフレクションは個人の活動でも活用できます。具体的には、個人の活動をリフレクションしたい人たち同士が集まり、それぞれの個人の活動を共有し合いながら対話していくことで、各々の活動における価値観を互いに深掘りしていくといったやり方が挙げられます。この方法では、他の人のリフレクションの語りを聞き、自分と他者との違いを認識することで、一人でふり返るよりも多角的な視点から自分自身の価値観に対する気づきを得ることができるのです。

状況に合わせたリフレクションのワークをいかに設計するか?

チームでリフレクションを実践するときは、そのときのチームの状況を踏まえて目的設定を行い、経験の記述と対話を組み合わせた設計を施すのが効果的です。日本企業ではプロジェクトのふり返りで、KPTと呼ばれる「Keep:よかったから続けたいこと」「Problem:うまくいかなかった課題」「Try:次に試したいこと」について話す方法がよく用いられます。この方法は、改善点を見つけるために有効です。ただし、その前段階として自分の思考や価値観を言語化する機会をとらなければ、そのプロジェクトの本質的な意味や課題にたどり着かず、Tryで出した項目も実行が困難なものばかりとなってしまい、モチベーションが下がるという事態にもなりかねません。Keep・Problem・Tryのそれぞれの項目について考える前に、先述した2つのリフレクションの方法などを活用して、事実として起きた事象を整理し、プロジェクトの現状認識をプロジェクトメンバーで揃えておくようにすると、建設的な対話がしやすくなります。

具体的なリフレクションのフレームワークは、他にもさまざまなものがあります。既存のフレームワークをそのまま活用するか、問いをアレンジするかなど、状況に合わせてリフレクションの方法を考えることから始めてみると、未来に活きるリフレクションの実践につながっていくでしょう。

参考文献

坂田哲人, 中田正弘, 村井尚子, 矢野博之, 山辺恵理子 著, 一般社団法人学び続ける教育者のための協会(REFLECT) 編, 「リフレクション入門」, 学文社, 2019

マックス・ヴァン マーネン 著, 村井 尚子 翻訳, 生きられた経験の探究―人間科学がひらく感受性豊かな“教育”の世界, ゆみる出版, 2011

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