リーダーだけが組織を変えられるわけではない。チーム全員による対話が、創造的な組織文化を生む
リーダーだけが組織を変えられるわけではない。チーム全員による対話が、創造的な組織文化を生む

リーダーだけが組織を変えられるわけではない。チーム全員による対話が、創造的な組織文化を生む

2020.12.24/12

あらゆる集団において、互いを理解し合い、創発を生み出していくためには「対話」が必要不可欠です。しかし、実際の現場では「上司が聞く耳を持ってくれず、対話など到底できる雰囲気ではない」「自分の職場で対話をするのは難易度が高い」「対話をする組織文化がない」など、対話を阻む様々な悩みの声を耳にします。

そういった悩みを受け、「創造的対話を組織文化として形成するには」と題したオンラインでの公開研究会を開催しました。ゲストには、日本における対話型組織開発の第一人者であり、マインドエコー代表の香取一昭さんをお迎え。

ファシリテーターは、株式会社ミミクリデザイン(現・株式会社MIMGIURI)の和泉裕之が務め、対話を用いて組織を変革する際のポイントや、創造的対話ができる組織文化を根付かせる方法について、お話を伺いました。

目次
チームの関係性の固着化による「解決困難なわかりあえなさ」
対立したとしても関係性が壊れないような安全な場を形成する
「穏健な過激派」として組織文化を変える
衝動がある人から対話が始まり、少しずつ仲間を募る


チームの関係性の固着化による「解決困難なわかりあえなさ」

まず、和泉による研究会の目的のシェアからスタート。CULTIBASEでは、創造性を耕す対象は大きく「個人」「チーム」「組織」の3つに分けて考えています。

和泉:自分としては、チームレベルで一人ひとりが対話を通じてお互いの創造性発揮できる状態を作りたいと感じています。しかし、チームの関係性が固着化すると、解決困難なわかりえなさが出現します。既にある知識、ノウハウで解決できるものではなく、人と人との関係性の中で生まれる解決が難しい問題、「適応課題」です。

和泉は宇田川 元一さんの著書『他者と働く 「わかりあえなさ」から始める組織論 』の内容を引用しながら、4つの適応課題について語ります。

1.ギャップ型
2.対立型
3.抑圧型
4.回避型

ギャップ型は、大切にしている価値観と実際の行動にギャップが生じるケース、対立型は、互いのコミットメントが対立するケース、抑圧型は、言いにくいことを言わないケース、回避型は、痛みや恐れを伴う本質的な問題を回避するために、逃げたり別の行動にすり替えたりするケースのことを指します。

和泉:これらの課題を解決するためには、そもそも人と人との関係性を見直して、再構築する必要があります。その手段として、対話がある。対話を通じて、互いの価値観を共有し、共通認識を深めていく。ただ、その対話は、いきなり出来るものかというとそうではありません。

和泉は、対話に至るまでの会話のフィールドを4つに分けて紹介しました。

・本音が語られることはない「儀礼的会話
・安心感が生まれることで自分が思っていることを率直に意見する「討論
・自分自身の内面と相手の内面に深く耳を傾ける「探究的対話
・本当に重要なことを追い求めた結果、新しいものが生まれる「創造的対話

これは、オットー・シャーマーの会話における4つの領域をモデル化し、それを社会変革などされているアダム・カヘンが改良したモデルを和泉が解釈、変更したもの。

和泉目指すべきところは、4つ目の創造的対話ですが、それぞれの対話に移行する段階でも困難は生じます。それをどのように乗り越え、創造的対話が日常的に生じる人や組織を増やし、組織文化を形成するにはどうすればよいのかを、本研究会では探求していきます。

対立したとしても関係性が壊れないような安全な場を形成する

和泉から研究会の目的の共有を受け、香取さんがこれまでのご経験も踏まえながら、「対話の組織文化をつくるには」というテーマで話題提供してくださいました。

香取:NTTで仕事をした最後の10年間は、「学習する組織」に興味を持ちました。そんなときに、自らも組織のゼネラルマネージャーになったり、子会社の社長になったりしたので、実践の中で学習する組織の組織開発を志向してきました。なかでも、対話の重要性を推進するための対話をテーマに、ワールドカフェ、OST、フューチャーセッションなどの手法を実践しました。

学習する組織とは、1990年にピーター・センゲが考察、提唱した概念。複雑性理解(システムシンキング)のもとで、ダイアログ(対話)によりメンタルモデル(思考の枠組み)を変え、個人と組織のありたい姿を構想して、その実現に向けて変革していくための原理を提案できる組織のこと。

ピーター・センゲが出版した『学習する組織――システム思考で未来を創造する』の中では、「チームの中核的な学習能力の3本柱」や「学習する組織を創るための5つのディシプリン」など、学習する組織をつくる上での実践に必要な考えが書かれています。

香取:私なりに学習する組織を表現すると、複雑性を理解したうえで対話によってメンタルモデルを変え、個人と組織の在りたい姿を構想し、その実現に向けて自己変革していくための原理を提案している、というものです。ここから、私のワークショップの実践がスタートしています。

それでは、対話とはなにか。立場や見解の違いを超えて、テーマに意識を集中し、オープンに話し、オープンに聴きながら探究を深めることにより、相互理解を深め、集合的なナレッジを生み出す会話の手法。勝ち負けの生じない合意やアイディアを生み出すための会話。参加者が気付かなかったアイディアが生成される会話。心をひとつにして行動することのできる状態を作り出す会話。単なる雑談でもなければ、説得のための議論でもない会話のあり方。これらが私の対話に対する見解です。

香取さんは、和泉が紹介したオットー・シャーマーの会話における4つの領域に触れながら、会話の流れが移り変わっていくためには、「対立したとしても関係性が壊れないような安全な器(場)を形成する必要がある」と指摘します。そうした場を作るために、リーダーにできる役割について、香取さんはこう語ります。

香取:これは事業計画を対話で社員と共に作ったある支店長の営業部長の話です。営業部長が、課長とワークショップをやり、今度は課長たちが社員にワークショップをして事業計画、販売目標をみんなで考えました。

その結果、本社から課せられた目標よりも、高い目標が設定されたのです。第一線で働く社員たちは、最初は自分たちで販売目標を作っていいことに驚いたそうですが、フォローアップや管理も自分たちで行うことで、結果的に良い成績を収めました。

このケースでは、リーダーは営業部長、課長、係長といった役職のある方々です。その組織の中での影響力を使って、組織文化変革を行うことが出来るというケースです。

「穏健な過激派」として組織文化を変える

では、「リーダーしか組織文化を変えることができないのか?」と言われればそうではない、と香取さんは語ります。

香取:リーダーではない人が組織を変えるための考え方は2つあります。1つは、「穏健な過激派」です。これは、デブラ・E・メイヤーソンが提唱した「Tempered Radicals」のことで、『静かなる改革者』として翻訳されています。

穏健な過激派とは、次のような人たちです。「組織に貢献して仕事を成功させているという意味ではインサイダーだが、アウトサイダーとして扱われる」、「組織の独占的な文化とは相容れない構想を持っている」、「組織に適合しながらも、独自性を持とうとする」、「ボートをゆすりながら、ボートに乗り続けようとする」、「クビにならない程度に過激になる」という特徴を持ちます。

こうした穏健な過激派になるのは、組織のなかで変革しようとする人ならどんな立場の人でもいいんです。少しずつ行動を変え、周囲と話し合いを続け、時間をかけて小さな成功を一つひとつ積み重ねていくことによって、大きな成功をもらたす。こういった改革は長続きします。こうした時間をかけた改革の根底にあるのは、人々の意識です。

デブラ・E・メイヤーソンの話に続いて、香取さんはピーター・センゲの考え方を引用して組織における革命の考え方について紹介します。

香取:ピーター・センゲは、著書『持続可能な未来へ』の中で、2つの革命があると語っています。1つは、政治的な革命。これは劇的な出来事ではありますが、長い時間で見ると、大きな実体的な変化をもたらすものではない、としてます。

もう1つは、集合的覚醒としての革命です。これは、人々が世界をどう見るか、何を大切だと考えるか、社会が進歩をどう考え、自らを組織化するか、そして組織がどう機能するかなどが、時間をかけて全てを変わってしまうこと。

例えば、ルネサンスや産業革命です。集合的覚醒としての革命は、人々の意識が変わって、システム、世の中が変わっていくという考え方です。

集合的覚醒としての革命の例として、香取さんはピーター・センゲが講演の中で、ある女性を連れてきたエピソードを共有しました。

香取:その女性は、スポーツ用品製造会社の女性役員でした。入社時から、女性がスポーツをするのを支援するような会社にしたい、環境に配慮したものづくりをする会社にしたい、という思いを周辺に話し、仲間を増やしていきました。そして、それが会社全体の方針になった、という話です。現状を変えたいと思っている人が、その志について話をして、仲間を募り、小さな成功を積み重ねて、大きな成功につなげるのが重要だということがわかるエピソードです。

穏健な過激派、集合的覚醒としての革命。これらにも通じる手法として、香取さんは「ワールドカフェ」を挙げました。

香取:フランス革命を引き起こしたのはサロン運動であり、アメリカの独立の先駆けとなったのが裁縫サークルや文通コミュニティでした。変革の試みを始めた人々は、何人かの友人との会話からすべてが始まったと語っています。

いろいろな場所で行われた対話のネットワーク化で世界を創ることができるとすれば、対話を生み出す「ワールドカフェ」は有効です。

香取さんは、これらの考え方をスライドを見せながら紹介しました。ロールアウト型は、リーダーがとるべきフォーマルなアプローチであり、リーダーでない人はエマージェンス型というインフォーマルなアプローチをとればいい、と香取さん。

最後に、「毎日がワールドカフェ」という、香取さんがキャッチフレーズにしている言葉で発表を締めくくりました。

衝動がある人から対話が始まり、少しずつ仲間を募る

香取さんの発表が終わり、イベント参加者に「対話の推進者に訪れる葛藤」について、アンケートを実施。以下の8つの選択肢のうち、自分に最もあてはまることを選んでいただきました。選択肢は以下の通りです。

①そもそも、何から始めればいいかわからない
②そもそも対話の雰囲気をどうつくればいいかわからない
③対話の機会を設けても、なぜか深まらずにおわってしまう
④対話への理解が薄く、価値を見い出せてないメンバーが多い
⑤対話したいが時間がない、メンバー同士の時間が合わない
⑥組織内の関係性が冷え切っており、雑談する空気にすらならない
⑦利害関係が対立した人や部署同士だと討論になってしまう
⑧上下関係(ヒエラルキー)が強固で対話する空気にならない

アンケートの結果、最も多く選ばれた選択肢は、「③対話の機会を設けても、なぜか深まらずに終わってしまう」。次に多かったのが、「④対話への理解が浅く、価値を見い出せてないメンバーが多い」でした。対話が深まらずに終わってしまう原因について、香取さんはこう語ります。

香取:対話が深まらない原因には、ファシリテーションがつたないことや、テーマ・対話への理解が薄いこと、対話に価値を見い出せない、といったことがあります。ただ、参加した人が対話に対して「食わず嫌い」である可能性もありますね。

例えば、ある学際的なプロジェクトに関わる大学の研究者が、研究者同士の対話の場をつくったところ、参加した研究者には対話に慣れてない人が多く、対話の場をつくるのに苦労したようでした。

ですが、終わってみると好評で、次回開催を望む研究者が多かったそうです。実際に対話の場をつくってみて、参加してもらったら、意味を見い出してもらえたケースですね。こうした「食わず嫌い」であることはあります。

「他の人との価値観を共有したり、答えを出さずにゆるく会話をすることに対して、そんな時間はもったいない、ということで反対されるケースが多いと聞きますが、実際にやってみて楽しさに気づくことはありますよね」と、和泉も語ります。

和泉の発言を受けて、香取さんも「効率を重視して、結論が出ないと意味がないと考える人がいるが、そうではありません。価値観を共有したり、対話自体を楽しみたい人が対話を行えばいい」と指摘します。

和泉:衝動がある人から対話がスタートして、そこから少しずつ仲間を募っていく。その動きが、大きく物事を変えていきます。ワールドカフェはフレームとして完成しており、変革の一歩目として取り組みやすいと考えられます。

対話したい衝動がある人が対話するのが出発点ではあるものの、意味ある対話にならなかったという意見も。そういうときは、問いの投げかけ方と合わせてアプローチを考えるべき、と香取さんは語ります。

香取:ワールドカフェには「大切な問い」というキーワードがあります。これについて話したいという、大切な問いが提示されると対話がすっと流れていきます。ワールドカフェでは、どういうテーマを選定するかが非常に重要です。ワールドカフェと違うアプローチがOSTです。

ワールドカフェは主催者が問いを作り、OSTは参加者が問いを作る。OSTでは、「これについて話し合いたい」という強い意志を持っている人が提案して、それに賛同する人が集まり対話を始めていくというやり方です。そのため、ワールドカフェで話し合いをはじめ、この人と話したいとなったら、OSTに移行する手があります。

香取さんの話を受けて、和泉も「大切な問い」の設定について言及します。「意見を出し合い、何が違うのか、どこが対立点なのか、差異はどこなのかを見ていくための問いを投げていないというのが、対話が深まらない要因なのではないかと思います」と語りました。

実際に対話してみると、困難に直面することはしばしばあります。そのときに、対話をはじめる人が覚悟を失ってはならないと語り、研究会を締めくくりました。

和泉:最初から、対話を避けていたわけではないはずです。それは、願いや希望があったものの、それが現実化しなかったことが積み重さなった結果かもしれません。その状況を解決するための魔法の杖はありません。互いの溝を向き合って埋めていく覚悟を持てるかが、対話を深めることができるかどうかのカギを握ります。


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執筆:斎藤公也
編集:モリジュンヤ

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