![なぜM&Aはうまくいかないのか:異なる組織文化を統合する組織開発の方法論](/_next/image?url=https%3A%2F%2Fcdn.sanity.io%2Fimages%2Feakefsaf%2Fproduction%2Faf138acf2ea8ba9cd6035dafd12c0255b959da65-1280x720.jpg&w=3840&q=75)
![和泉 裕之](https://cdn.sanity.io/images/eakefsaf/production/39805f259be80151c9b5903f6ba566fdd1895195-550x550.jpg)
約95分
10/22(土)に開催した「事業多角化のジレンマをいかに乗り越えるか?:シナジーを生み出す組織デザイン論」のアーカイブ動画です。ゲストは慶應義塾大学商学部教授・牛島辰男さん。新著『企業戦略論』の内容をもとに、多角化を正しく推進し、ジレンマと向き合うための組織デザイン論を探求しました。
00:11 イントロダクション・登壇者自己紹介
03:03 CULTIBASE Labの紹介
06:22 本日のテーマ”事業多角化のジレンマをいかに乗り越えるか?”について
09:56 チェックイン・ゲスト:牛島辰男さんの自己紹介
16:45 事業多角化の合理性とは
22:52 シナジーとは何か・2つのシナジー
30:12 事業シナジーのメカニズム
34:48 財務シナジーのメカニズム
40:02 実務家がシナジーのメカニズムを理解する重要性・シナジーや付加価値を測定することは可能か?
44:37 多様な事業の経験を通じて、学習面のシナジーは生まれるのか
47:46 前半サマリ
52:50 シナジーを生み出す組織のあり方
57:35 シナジーを生み出すための組織デザイン
01:04:05 事業多角化が生むジレンマ
01:11:29 目指すシナジーを方向転換する際に気をつけること
01:13:40 既存の企業文化が脅かされるリスクがある中で、事業多角化の是非をどう判断するか?
01:16:53 日本企業が低収益セグメントを抱え込みやすい原因とは?
01:22:46 事業多角化を検討すべきタイミングとは?
01:26:58 新興企業が既存事業から別事業へと軸足を変えることの是非
01:28:15 ラップアップ・クロージング
・イベント前半では、事業多角化がもたらす価値や、2種類のシナジーが生まれるメカニズムについて伺った。そもそも事業多角化とは、企業が複数の事業を持つことであり、単独の事業を抱えるだけでは生み出されない事業間の相乗効果をもたらしうる。複数事業があるからこそ生まれる付加価値や利益=シナジーを生み出すことが、多角化経営の究極の目的だと牛島さんは話す。
・では、シナジーとは一体何か。牛島さんは、シナジーには2種類あるという。一つ目が、事業シナジー。事業間で、モノや人、それに紐づくスキルや知識などの資源を、事業間で共用することで、事業の競争力と稼ぐ力が高められることを指す。事業シナジーは、共用の資源をインプットし、①資源の移転、②活動の調整、③活動の統合というメカニズムで生まれる。
・二つ目が、財務シナジーであり、事業間で資金を移動させることで、事業の成長力や安定性を向上させる状態を指す。財務シナジーは、①ポートフォリオマネジメントによる事業間での資金の共用を通じ、②キャッシュフローを安定化させるというメカニズムで発揮される。
・補足として、牛島さんはシナジーやそれによって生まれる価値は定量的に計測できないと伝えた。事業多角化した状態と、それぞれの事業部が独立している状態を、同時に計測できないからだ。そのため、事業多角化するのかどうか、どうそれを推し進めていくのかは、経営陣やマネージャーが考え続け、”Judgement(判断)”する必要があると伝えた。
・イベント後半では、企業が戦略的にシナジーを作るための組織デザインについて解説いただいた。まず前提として、牛島さんは事業シナジーと財務シナジーでは、求められる組織デザインが異なると伝えた。事業シナジーでは、指示系統としての”タテ糸”と組織を横断する”ヨコ糸”が求められるという。なぜなら、事業間で資源をシェアするための協力体制や仕組みがあって初めて、事業シナジーが生まれるからだ。一方、財務シナジーは、トップマネジメントや本社部門などが、それぞれの事業の将来性などを考慮しながら、優先的に資金を投下する事業部門を決める必要がある。投資家のような眼差しが求められるのだ。
・ここで留意すべきは、どちらのシナジーを目指そうとも、何らかの犠牲が生まれる点だ。例えば事業シナジーの発揮を目指すと、組織内に多くの”横糸”を巡らせることになり、責任の所在が分散したり、事業単体の力が見えにくくなったりする可能性がある。その結果、事業間に”もたれ合い”が生まれ、組織全体の稼ぐ力が低下してしまう。一方、財務シナジーの発揮を目指すと、それぞれの事業部門が自己完結してしまい、組織内に壁が生まれてしまう。牛島さんは、これこそが事業多角化の本質的なジレンマだという。
・そのため、事業多角化を実践する際には、自社がどんなシナジーを重視するのかを考慮した上での組織デザインが必要だ。また、その結果として何が犠牲になるのかを捉えた上で、大きなダメージを受けない工夫が求められる。牛島さんは、事業シナジーと財務シナジーの完全な両立は難しいものの、可能な限りの両立はできるはずだと述べた。
動画
記事
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。MIMIGURIでは、イノベーションプロジェクトの責任者を務め、人・組織・社会の変容にファシリテーターとして伴走している。R&D部門や新規事業部門に出向し、ハンズオンでボトムアップ型の事業・組織づくりを推進することを得意としている。CULTIBASEでは組織学習に関するコンテンツを担当。MIMIGURIに入る以前は、日系企業再生コンサルティングファームにて、再生対象企業の事業計画策定、経営企画機能の整備、資金繰り管理等に従事していた。北海道東川町在住。
慶應義塾大学商学部教授
1989年、慶應義塾大学経済学部卒。91年、同学大学院経済学研究科修了。2003年、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)アンダーソン経営大学院、経営学博士(Ph.D.)。三菱総合研究所研究員、青山学院大学大学院国際マネジメント研究科(青山ビジネススクール)准教授・教授を経て現職。
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