組織学習をファシリテートする:変化の働きかけが直面するジレンマを創造的に解決する

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約98分

9/18(土)に開催されたイベント「組織学習をファシリテートする:変化の働きかけが直面するジレンマを創造的に解決する」のアーカイブ動画です。
※イベント内にて、一部スライドが正常に表示されない不具合が発生いたしました。スライドの全容をご覧になりたい方は、恐れ入りますが下記の資料よりPDFにてご確認ください。ご不便をおかけしてしまい、申し訳ございません。

資料

講義パートで使用した資料はこちら
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※会員以外の方への譲渡・転送等はご遠慮ください。

チャプター

00:11 イントロダクション(チェックイン、イベント趣旨紹介)
09:50 自己紹介・講座背景
17:13 組織学習の定義とプロセス
26:13 「正統性を獲得する」とはどういうことか?
50:01 正統性の獲得を促進する2つのアプローチ
1:05:44 組織学習のケーススタディ
1:17:23 まとめ・質疑応答(1)
1:30:13 今後のイベントのお知らせ・質疑応答(2)

<今週のポイント>

  • 講師を務める遠又は、前職で「組織内で数値指標以外の言葉が枯れる」感覚に問題意識を持ったことがきっかけで、現在は進行中のプロセスに耳をすませ、介入の仕方を実験し続けるファシリテーション型の組織づくりを追求しているという。また、こうした思いが現在の組織学習への関心に繋がっていると話す。
  • 組織学習は、「組織と個人を内包するシステム全体における組織ルーティンの変化」と定義される。ここでいう「ルーティン」とは、意思決定や行動のパターン、ないしはその前提にあるメンタルモデルを指す。組織学習は既存のルーティンを変化させ、新しいルーティンとして生成し直すための考え方である。
  • 組織学習のプロセスは、個人が新たな知を獲得し、獲得した知を集団へと移転させることで進行する。今回のイベントでは、このポイントに着目し、個人の試行錯誤による知をいかに組織内で「正統化」していくのか、主に解説する。
  • 組織が新たな習慣を獲得する際に直面しがちなジレンマが二つある。一つは「不確実性と正統性のトレードオフ」がある。これは獲得したい習慣が新しいものであるほど、不確実性が高く見えるため、正統性の獲得は難しい関係性を指す。もう一つは「広さと深さのトレードオフ」であり、少人数のほうが新たな知が習慣として定着しやすいが、組織内での正統性を高めるためには、多くの人と習慣を共有する必要がある。
  • これらのジレンマによって、経営と現場が良かれと思って行った働きかけが、組織内の溝を深めてしまうことがある。例えばトップがキーワードだけが掲げられるものの、それをどう行動や具体的な事象に落とし込んでいくための解像度が低いと、現場が理解できず混乱してしまう。
  • 組織学習のアプローチは「インストール型」と「多様な理由の創発型」の二種類がある。これらは、「共感の度合い」と「賛同者の数」という二つの要素の掛け算が「新たな習慣の拡がり」を生むと考えた時に、どちらの要素を変数として捉えるのかによって区別される。
  • 組織学習はどのように促せるか。まず個人の知は、経験と対話による意味生成を支援することで生じやすくなる。また、生じた意味を広めるアカウンタビリティ支援を経て、最後にルール・制度化へと繋げていくことで、組織学習をファシリテートすることができる。
  • 正統性の獲得に関して「(トップとボトムの)往復活動を通して組織的に創造し続けるもの」だと遠又は述べる。

今回テーマとして掲げる「組織学習」は、CULTIBASEがこれからの組織づくりを考えていく上で欠かせない要素の一つです。過去にも、いくつかの連載や対談記事を通して、組織学習の理論と実践について理解を深めてきました。

▼組織学習入門|コンテンツパッケージ
https://www.cultibase.jp/packages/5323

これらの流れを踏まえた上で今回のイベントでは、「正統性の獲得」という新たな観点から、組織の風土や習慣を緩やかに変革していくためのアプローチを紹介しています。特に、中盤で講師の遠又から「組織学習促進におけるジレンマ」として掲げられる、「獲得したい習慣が新しいものであるほど、組織からは不確実性が高く見えるため、正統性の獲得は難しくなる」といった視点は、CULTIBASEのような場で越境的に学び続ける会員の皆さまにとっては、思わず「そうそう」と頷きたくなるところかもしれません。

自分が大切だと思っている概念や考え方を、いかに組織に根付かせるか。その問いと向き合う上では、決して他者に対して説得的に納得を強いるのではなく、あくまで双方の視点のものの見方を大切にしながら、対話によって新たな習慣を紡いでいくことが重要なのではないか。それがイベントを通して遠又がもっとも強調していたメッセージであり、そのための組織学習の捉え方について、基礎から学べるコンテンツとなりました。


出演者

遠又 圭佑
遠又 圭佑

慶應義塾大学法学部法律学科卒業。MIMIGURIでは、イノベーションプロジェクトの責任者を務め、人・組織・社会の変容にファシリテーターとして伴走している。R&D部門や新規事業部門に出向し、ハンズオンでボトムアップ型の事業・組織づくりを推進することを得意としている。CULTIBASEでは組織学習に関するコンテンツを担当。MIMIGURIに入る以前は、日系企業再生コンサルティングファームにて、再生対象企業の事業計画策定、経営企画機能の整備、資金繰り管理等に従事していた。北海道東川町在住。