チームの議論の焦点をコントロールする『フォーカスポイント法』とは
チームの議論の焦点をコントロールする『フォーカスポイント法』とは

チームの議論の焦点をコントロールする『フォーカスポイント法』とは

2021.12.16/4

誰も意見を述べない「お通夜ミーティング」から脱却し、チームメンバーのポテンシャルを最大限に発揮させるためには「問いかけ」に工夫を凝らすことが重要です。

意外に疎かにされがちなポイントとして、問いかけの「文章表現」の工夫が挙げられます。同じような方向性の質問であっても、表現ひとつにちょっとした工夫を凝らすことで、問いかけのインパクトや印象、相手の発想を大きく変えることができます。

本記事では、新刊『問いかけの作法』で解説している「誇張法」と呼ばれる使いやすいテクニックについて解説します。

チームの話し合いの焦点の分散をいかに防ぐか

同じような質問を投げかけたとしても、質問の文言の「どこ」に意識が向けられるかは、質問文の表現や、相手の関心や前提知識などによって、異なります。

例えば、既存事業の今後の長期的方針について、チームメンバーで話し合っていたとします。そんなときに、

「もしあなたが社長だったら、アフターコロナ時代に向けて、この事業をどうマネジメントしますか?」

…という質問を投げかけられた場面を思い浮かべてみてください。

この質問は、登場する要素が多く、ただでさえいろいろなところに目が行きます。この質問をそのまま投げかけた場合、おそらく人によって気に掛ける焦点は分散し、チームの話し合いにおいて何が重要な論点なのかがわからなくなる可能性があります。

大袈裟な表現で、フォーカスポイントを作る

こうしたときに、問いかけの作法のテクニック「誇張法」を活用することで、議論の焦点をガイドすることができます。

小説などで活用される「誇張法」とは、文章の一部の情報を、大袈裟に表現するテクニックです。相手に印象付け、注意を引くことができます。たとえば「死ぬほど頑張った」「1万年ぶりに外出した」などの表現が該当します。

これを応用して、問いかけにおける特定の箇所を意図的に大袈裟に誇張することで、質問の「フォーカスポイント」をコントロールするのです。

フォーカスポイントとは、カメラで写真を撮影する際に、ピントを合わせる箇所のことです。同じ被写体を撮影する場合でも、人物の顔にピントを合わせるのか、人物の手に持たれたモノにピントを合わせるのか、背景にピントを合わせるのかで、写真の印象は大きく変わります。

さきほどの問いかけを例に考えてみると、フォーカスポイントを当てられそうな箇所は、以下の(a)(b)(c)の3通り考えられます。

もしあなたが社長だったら(a)、アフターコロナ時代に向けて(b)、この事業をどうマネジメントしますか?(c)

このまま投げかけた場合、人によって「もし自分が社長だったら」という立場の仮定(a)を中心にシミュレーションを巡らせる人もいるでしょうし、「アフターコロナ時代」という社会の未来の状態(b)を想像することに重きを置く人もいるでしょう。あるいは単純に「この事業をどうマネジメントするか」という事業戦略(c)を検討するかもしれません。

ところが、(a)〜(c)のどこかに極端にフォーカスポイントを当て、誇張法を活用することによって、質問の前提やニュアンス、チームメンバーの意識の焦点をガイドすることが可能です。

(a)にフォーカスを当てた場合
もしあなたがこの会社の社長で、組織と事業の責任を負っている重大な立場だったら…と考えてみて欲しいのですが、アフターコロナ時代に向けて、この事業をどうマネジメントしますか?

(b)にフォーカスを当てた場合
2020年から始まったコロナパニック。多くの犠牲を生み出し、社会の状況や価値観が劇的に転換しつつあるなかで、これからアフターコロナ時代が訪れることが予想されます。この新時代に向けて、もしあなたが社長だったらこの事業をどうマネジメントしますか?

(c)にフォーカスを当てた場合
この事業には課題も山積みだけれど、これから大きなブレイクスルーの可能性も秘めています。うまくいくもいかぬも、すべては事業戦略次第。もしあなたが社長だったら、アフターコロナ時代に向けて、どんな事業ビジョンを打ち立て、どんな戦略で、どんなふうにマネジメントしていきたいですか?

このように、組み立てた質問の文言のうち、フォーカスポイントを作りたい箇所を大袈裟に誇張することによって、質問のニュアンスを大きく調整することができるのです。

新刊『問いかけの作法』では、これ以外にも、問いかけの文章表現のテクニックを合計10パターン、実例を交えて解説しています。ミーティングで投げかける問いかけの効果を最大化させるためにも、是非実践しやすいパターンから活用してみてください。


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