チームメンバーの“こだわり“を見抜く6つのポイント

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チームメンバーの“こだわり“を見抜く6つのポイント

外部環境の変化が激しく、先行きの見えない時代において、いわゆる「選択と集中」を戦略の中心に置いたトップダウン型(ファクトリー型)の組織形態から、ミドルマネージャーを起点とした個の多様性を活かすボトムアップ型(ワークショップ型)の組織へのシフトが求められています。

この過渡期において、多くの企業が前時代的なトップダウンの仕事の進め方から抜け出すことができず、本来引き出すべきチームメンバーのポテンシャルを抑圧してしまう問題が起こりがちです。

安斎の新刊『問いかけの作法』では、この組織の転換期を乗り越え、チームのポテンシャルを発揮させるための指針として、チームにおいて「こだわり」を見つけて、育てることと、「とらわれ」を疑い、問い直すことの両方が、互いに循環しながら実現されている状態を目指すことを提案しています。

チームのポテンシャルが発揮されるための循環

チームメンバーのこだわりのヒントは日常に現われる

しかしながら、ファクトリー型の仕事のスタイルが染み付いていて、お互いの関係性が固着化していると、日々の仕事のプロセスから「こだわりの種」を見つけること自体が困難な場合もあるでしょう。

ストレートに「どこにこだわりがありますか?」「こだわりがあるとすれば、どこですか?」と尋ねても、「特にありません」と返ってくる場合は、黄信号です。

このような場合、本当はこだわりがあるけれど発言できていないケースや、普段の仕事において自分のこだわりが発揮できていないケース、また自信がなくて自分のこだわりの種を自分自身が気づいていないケースなど、さまざまです。

いずれにせよ、どんなメンバーにも個性があると信じて、日常の些細な場面から、こだわりの片鱗を地道に探っていくしかありません。以下のようなポイントに着目しながら日々の様子を観察すると、メンバーのこだわりが見つかるかもしれません。

こだわりが発露しやすいポイント
(1)基準の高さ
(2)過剰な投資
(3)違いの識別
(4)怒りのツボ
(5)偏愛対象
(6)違和感

ポイント(1)基準の高さ

物事に対する基準の高さは、その人のこだわりが反映されている可能性があります。

たとえば、アイデアを絞り込んで合意形成をする場面で、多数の人は「これで十分だ」と感じているのに、一人だけ「まだ物足りない」「もう少し調整したい」と納得していなかった場合、その人は別のメンバーよりも高い基準を持っています。

この背後にある価値基準は、そのメンバーのこだわりである可能性が高いでしょう。

ポイント(2)過剰な投資

すでに及第点に達しているにもかかわらず、作業を続けたり、お金をかけたり、投資を継続している場合も、こだわりの現れかもしれません。

洋服にこだわりがない人は、1週間着まわせるだけのアイテムがあれば十分ですが、こだわりが高い人は、使いきれないほど沢山の服を買ったり、ディテールが違う同じような服を何着も買ったりするのと同様です。

ポイント(3)違いの識別

洋服にこだわりがない人にとっては「同じような服」でも、こだわりのある当人にとっては「色合いが違う」「生地が違う」「シルエットが微妙に違う」など、「違い」を識別して選んでいるわけです。

仕事の中で、何らかの対象に対して細かい違いを識別しているメンバーがいたら、それはこだわりのサインかもしれません。

ポイント(4)怒りのツボ

その人が「何に怒るのか」も、こだわりと裏表だと言えます。

チームメンバーが怒り心頭になるタイミングを待つのも変ですから、直接的に「仕事の中で許せないことは?」「これまでチームで働いていて、イライラしたことは?」など、過去の経験を探ってしまうのも手です。

ポイント(5)偏愛

こだわりという言葉は、人によっては職人的な技能を想像し、ハードルが高いものと感じる場合があります。

こだわるとは、思い入れを持つことですから、別の言い方をすれば「偏愛」していることだとも言えます。

こだわりがないという人にも、「休みの日には、どんなことに時間やお金を使っていますか?」と尋ねると、その人の趣味趣向が見えてきて、こだわりの種が見つかるかもしれません。

ポイント(6)違和感

上記全てに関連しますが、相手が感じている「違和感」からこだわりを探り当てるのも手です。

チームの関係性が十分でないうちは、「怒り」や「偏愛」のような強い反応は発露しにくく、観察しにくい場合もあります。そのような時は、密かに感じている違和感がないかどうかを尋ねてみると、ルーツを探る手がかりが得られるかもしれません。

以上、日常においてメンバーのこだわりが発露しやすい6つのポイントを紹介しました。

チームメンバーのこだわりを発掘することは、ワークショップ型のチームを作っていく上で、とても大切です。日々の問いかけの工夫とあわせて、チームビルディングの仕組みや習慣をチームに搭載しておくとよいでしょう。

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著者

株式会社MIMIGURI 代表取締役Co-CEO

東京大学大学院 情報学環 客員研究員

1985年生まれ。東京都出身。私立武蔵高校、東京大学工学部卒業、東京大学大学院学際情報学府博士課程修了。博士(学際情報学)。株式会社MIMIGURI 代表取締役Co-CEO/東京大学 特任助教授。

企業経営と研究活動を往復しながら、人と組織の可能性を活かした新しい経営・マネジメント論を探究している。主な著書に『問いのデザイン』、『問いかけの作法』、『パラドックス思考』、『リサーチ・ドリブン・イノベーション』、『ワークショップデザイン論』『チームレジリエンス』などがある。

X(Twitter)noteVoicyhttp://yukianzai.com/

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