デザインを組織に根付かせる:“良さの探究“を営むためのプロセス・モデルとは?

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約92分

組織をつくる

#デザイン組織
#組織文化
#組織デザイン
#ナレッジマネジメント
小田 裕和
小田 裕和

11/26(土)に開催した「デザインを組織に根付かせる:“良さの探究“を営むためのプロセス・モデルとは?」のアーカイブ動画です。本イベントでは、デザイン思考が元来目指していた「組織にデザインを根付かせる」ことについて、”デザイン思考ブーム”時に不足していた「スキルやマインドセットの醸成」という観点から探究しました。

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「デザインを組織に根付かせる:“良さの探究“を営むためのプロセス・モデルとは?」のチャプター

0:12 イントロダクション・チェックイン
12:44 デザインの研究・実践を続けてきた小田のキャリア
19:49 デザイン思考の現在:そもそもデザイン思考とは何か?
26:37 デザイン思考がうまくいかない理由(1):プロトタイピングに進まない
37:40 デザイン思考がうまくいかない理由(2):共感まで戻らない
41:30 デザイン思考がうまくいかない理由(3):デザインマインドセットの不足
46:54 デザインが組織に根付くための「デュアルサイクルモデル」とは
52:23 デュアルサイクルモデルの事例
56:28 まとめ:デザイン思考が組織に根付くための4要素
1:14:57 パネルディスカッション(1):デザインを根付かせるために、何から手をつけるか?
1:23:42 パネルディスカッション(2):実践において気をつけるべきポイントは?

「デザインを組織に根付かせる:“良さの探究“を営むためのプロセス・モデルとは?」のポイント

今回のイベントの講師を務める小田裕和(株式会社MIMIGURI デザインリサーチャー)は、デザイナーとしてのキャリアを持ち、デザイン研究者としても活躍をする中で、理論派のデザインシンカーと実践者としてのデザイナーの側面があるとの気づきを得たという。

デザイン思考という言葉を説明する際「共感→定義→アイデア創造→プロトタイプ→テスト」のいわゆる5ステップモデルが引用されることは多い。

しかし、5ステップモデルを提唱しデザイン思考を広げる中心役を担っていたたスタンフォード大学のd.schoolではこのモデル自体を盛んには謳っておらず、ベースとなるスキルやマインドセットとしての8つのコア能力がより重要視されていると小田は指摘する。

とはいえ5ステップモデルが意味がないわけではなく、プロセスや言葉のみが独り歩きすることがデザイン思考がうまく回らない原因になっているのではないかと述べ、デザイン思考を阻む壁は大きく2つのパターンがあると小田は主張する。

まず1つ目のパターンとして、プロトタイピングに進まないというケースを紹介し、その原因としては「プロトタイプが重すぎる」ことと、「アカウンタビリティー移譲の欠如」にあると指摘する。「プロトタイプが重すぎる」というのは、例えば予算やリソースが必要ゆえ承認がおりづらいということ。さらにより本質的な問題としてとして、上長が説明をもらい、承認をしなければ実行できない状態(=「アカウンタビリティー移譲の欠如」)があるとし、その結果、現場の判断で探究を深められなくなると指摘する。

2つ目のパターンとしては、プロトタイプを構築しテストしたあとに、本来共感に戻らないといけないはずがアイデア創造に戻ってしまうケースがあると紹介し、その原因として「組織における評価構造」と、「デザインマインドセットの不足」があると指摘する。多くの企業で、ゲートやデザインレビューは一度通過したら基本的に後戻りしないことを前提にしているため、繰り返し検証するというプロセスが止まり問い直しが生じなくなる。こうした問題の根底にあるのがデザインマインドセットの不足だと指摘する。何を良いとするかは絶対的な答えはなく変化し続けることを理解し、考え続ける問い直し続ける姿勢が大事だと主張する。

これを踏まえると、5ステップモデルは何が良いとされるかを探るプロセスと、どうすればその良さが体現されるかを探る2つのプロセスに分けることができる。デザイン思考とは、このプロセスを行き来し続けることで、良さに関する学びを積み重ねる営みなのだ。

この2つのプロセスを繰り返すモデルとして、小田はデュアルサイクルモデルを提案し、内面化→共同化→表出化を通して、組織的な形式知として連結化されていくという営みとして説明する。良さの探索は「省察|Reflection」的な営みであり、良さの体現は自分の外に目を向けて考えてみる「投射的営み」として位置づけられる。

それでは、良さの探究にまつわる2つのサイクルを回しデザイン思考を組織に根付かせるためには何が必要なのだろうか?小田デザイン思考を組織に根付かせるには以下の4点を押さえるとよいと語る。

① 探究のマインドセットを育む
② 評価する側こそ、プロセスに巻き込まれるべき
③ カスタマーサポートで、関係性を終わらせない
④ 人事評価に「学び」の視点を

イベント終盤のパネルディスカッションにおいて、これまでの話を踏まえてこれからどうしたいか、という問いがでた。この問に対し、小田は「まずできるところはどこか」という視点を持つこと、「何か変えられるところを見いだして小さく変えていく」ことが大事だと指摘する。また、栄前田はデュアルサイクルモデルの特徴として、どこからスタートしてもよいという点に着目し、好奇心、衝動、あるいは自組織における動かせるところから動かし始めるのがよいのではないかと述べる。さらに循環が終わらないのではないかという不安に対しては、そもそも問いは答えを生み出すものではなく、問に対して探求していくことが大事であり問いにサステナブル向き合い続けるためのプロセスや組織の柔軟性も考えたいと締めくくった。

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出演者

小田 裕和
小田 裕和

千葉工業大学工学部デザイン科学科卒。千葉工業大学大学院工学研究科工学専攻博士課程修了。博士(工学)。デザインにまつわる知を起点に、新たな価値を創り出すための方法論や、そのための教育や組織のあり方について研究を行っている。特定の領域の専門知よりも、横断的な複合知を扱う必要があるようなプロジェクトを得意とし、事業開発から組織開発まで、幅広い案件のコンサルテーション、ファシリテーションを担当する。主な著書に『リサーチ・ドリブン・イノベーション-「問い」を起点にアイデアを探究する』(共著・翔泳社)がある。