「心理的安全性の誤解」の誤解

2023.11.14/54

心理的安全性は、ここ数年で台頭し、いまや職場の関係性について語る上で欠かせないキーワードのひとつです。

たとえば、参画しているプロジェクトの中で、他の人のアイデアの問題点に気づいたとき。あるいは、プロジェクトの進め方に非効率さを感じたりしたとき。臆することなく指摘することができるでしょうか。たとえその指摘がプロジェクトをより良いものにするであろうとわかっていても、つい躊躇してしまうこともあるかと思います。

そして、この”言いにくさ”は、相手が誰かによっても大きく変わります。同僚には批判的なことも遠慮なく言えるけれど、相手が上司だとなかなか言えない──そんな方も多いのではないでしょうか。米国の研究者・エドモンドソンは、この事象を取り上げ、「対人関係のリスクをとっても安全であると思うこと」を示す概念として、心理的安全性を定義・提唱しました。つまり、「相手が誰であれ安全に発言ができる」のであればその職場は心理的安全性が高く、そうでなければ低いということです。

しかしながら、心理的安全性はビジネスで広く語られるようになるとともにその捉え方も多様化し、中には「誤解」と言わざるを得ないような表現も散見されるようになりました。例えば、

「心理的安全性がある=ヌルいということ?」
「心理的安全性がある=バチバチにやりあうということ?」
「心理的安全性がある=否定・批判されないということ?」

など。これらの表現はたしかに説明不足で、紛れもなく「誤解」ではあります。しかし同時に、心理的安全性の性質のいち部分を捉えたものでもあります。そのため、これらの表現の何が、どう誤解なのかを学ぶことが、心理的安全性を正しく理解するための手がかりとなり得ます。

今回の「古今東南アノテート」では、これらの「誤解」を手がかりとしながら、「結局のところ、心理的安全性とは何なのか?」というテーマに迫ります。題材とする書籍は、2023年5月に刊行された『60分でわかる! 心理的安全性 超入門』。著者の伊達洋駆さん(ビジネスリサーチラボ・代表取締役)をゲストにお招きし、講義とディスカッションで理解を深めていきます。

・心理的安全性の作用と副作用とは?
・なぜ心理的安全性はここまで長く注目され続けるのか?
・心理的安全性は「職場の元の特性を強調する」?!

などのトピックを中心に、シンプルながら奥深く、私たちの日常と密接に結びついた心理的安全性の本質を探究します。配信日は11/14(火)。ぜひお楽しみに!

参考:『 60分でわかる! 心理的安全性 超入門』伊達洋駆.技術評論社.

関連記事

過去にCULTIBASEで扱った、心理的安全性に関する記事はこちら。ぜひ合わせてご覧ください。

▼「心理的安全」なチームの4つの条件: 学習する職場をつくるための「心理的安全性」入門

https://www.cultibase.jp/articles/1583

▼心理的安全性は、一人ひとりのリーダーシップから築かれる──ZENTech 石井遼介さん×立教大学准教授 舘野 泰一さん対談
https://www.cultibase.jp/articles/4637

 

ゲスト

伊達洋駆(株式会社ビジネスリサーチラボ 代表取締役)

神戸大学大学院経営学研究科 博士前期課程修了。修士(経営学)。2009年にLLPビジネスリサーチラボ、2011年に株式会社ビジネスリサーチラボを創業。以降、組織・人事領域を中心に、民間企業を対象にした調査・コンサルティング事業を展開。研究知と実践知の両方を活用した「アカデミックリサーチ」をコンセプトに、組織サーベイや人事データ分析のサービスを提供している。

 

パーソナリティ

東南 裕美(株式会社MIMIGURI リサーチャー)

立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科博士前期課程修了。立教大学大学院経営学研究科博士後期課程在籍。人と組織の学習・変容に興味を持ち、組織開発が集団の創造性発揮をもたらすプロセスについて研究を行っている。MIMIGURIでは、研究機関部門の一員として、組織開発に関する基礎研究とコンテンツ開発を行う。共著に『M&A後の組織・職場づくり入門:「人と組織」にフォーカスした企業合併をいかに進めるか』がある。

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