“カネ”と”ヒト”の矛盾を乗り越える:「中二階の原理」とは?

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東南 裕美
東南 裕美

企業組織において欠かせない経営の構成要素である「カネ」と「ヒト」には、本質的な矛盾があります。 今回は、カネとヒトの矛盾に着目し、乗り越えるための原理を提案する、注目の論文「カネの結合体とヒトの結合体の二面性」(伊丹 敬之氏/一橋大学 名誉教授)を紹介します。

企業の本質を見直すと、企業の支配権力は株主がもっている(カネ)一方で、働く人々(ヒト)に対する金銭的報酬も必要になるという、せめぎ合いが生じています。同様に、「企業統治」に関しても、カネとヒトのせめぎ合いが生まれます。この二面性の矛盾に目を向けているのが本論文です。

中二階の原理とは何か、論文を元に解説し、この原理を考える意義や、自社に照らし合わせて考えていただきたい問いをお伝えします。

「”カネ”と”ヒト”の矛盾を乗り越える:『中二階の原理』とは?」のチャプター

00:32 本日の文献の概要
02:55 人的資本経営に関心が高まる背景
07:30 企業の二面性:”カネ”の結合体と”ヒト”の結合体
11:02 中二階の原理とは
18:33 CULTIBASEが中二階の原理に注目する意義
22:28 論文を踏まえて、考えたいこと

「”カネ”と”ヒト”の矛盾を乗り越える:『中二階の原理』とは?」のポイント

  • 今回紹介するのは、伊丹敬之氏(一橋大学 名誉教授)の論文「カネの結合体とヒトの結合体の二面性」。
  • 論文では冒頭に、人的資本経営に関心が高まる背景が紹介されている。1975年から2021年における、企業が生み出す3種類のキャッシュフローの推移が表されたグラフが示され、設備投資の減少と、株主配当の増加傾向が指摘されている。
  • もともと日本企業においては、株式会社は株主のものという”建前”と、従業員重視の経営をすべきという”空気”によって、バランスが取られていたのではないかと考察されている。
  • ところが、バブル崩壊やソ連崩壊などを背景に「日本の経営のあり方はおかしいのではないか?」という自己疑問と外部からの圧力によって、日本独自の経営の原理に対する自信のなさに繋がっているのではないかと述べられている。
  • しかし本論文では、日本企業の経営はそこまで否定する必要があるものなんだろうかと、投げかけられる。企業の本質を見つめ直す視点として「”カネ”と”ヒト”の二面性」について言及がなされた。
  • 企業には、株主から資金を提供してもらい企業活動が行われていく”カネ”の結合体という側面と、企業の競争力の源泉である”ヒト”の結合体でもある。この”カネ”と”ヒト”の論理はせめぎ合っており、株式会社制度は矛盾を抱えた制度であると書かれている。
  • 特に重要な本質的矛盾として「企業統治」を巡るせめぎ合いが挙げられている。企業の支配権力は「株」によって量的に確定できる一方で、企業の競争力を実質的に左右する重要なプレーヤーは「働く人々」。しかし働く人々には、企業の命運を決めるような意思決定に対して参加の権利を持っていない点が指摘されている。
  • この矛盾回避を行うために日本企業で自然発生的に取られてきた対応があり、それを「中二階の原理」と表現している。
  • 中二階の原理では、社会や組織帯を二階建ての三角形としてイメージし、二階は全体を動かしていく基本原理、一階は基本原理の中で生きている人や現実を指す。二階と一階の間に”補完的な原理”を挿入することで、両者のねじれ感覚が中和する。日本企業は、中二階の原理として、例えば「従業員出身の取締役が大半の取締役会の構成になっている」などによって、資本と労働の矛盾を自然発生的に中和してきた。
  • CULTIBASEで中二階の原理を注目する意義として東南は、人の「学習」や「発達」に注目し大切にしてきた中で、それが経営にどう寄与するのかという問いを考えるにあたって、意義のある考え方だと述べる。
  • またCULTIBASEでは、これまで組織のあらゆる「矛盾」を扱ってきたが、矛盾を手懐けることがこれからの経営において大切なのではないかと東南は述べた。
  • 最後に東南は、この論文を踏まえて、考えたいこと/考えてみて欲しいこととして「自社はカネの論理、ヒトの論理、どちらかに傾倒してしまっていないか?」「自社にはどのような中二階の原理が働いているか?」などの問いを挙げた。

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出演者

東南 裕美
東南 裕美

リサーチャー / ファシリテーター

立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科博士前期課程修了。立教大学大学院経営学研究科博士後期課程在籍。人と組織の学習・変容に興味を持ち、組織開発が集団の創造性発揮をもたらすプロセスについて研究を行っている。共著に『M&A後の組織・職場づくり入門:「人と組織」にフォーカスした企業合併をいかに進めるか』がある。