中小企業におけるマネージャーの育て方

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約94分

東南 裕美
東南 裕美
吉野 拓人
吉野 拓人
保田 江美
保田 江美

10/2(土)に開催された「中小企業におけるマネージャーの育て方」のアーカイブ動画です。

資料

当日資料
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チャプター

00:11 イントロダクション/チェックイン
09:53 本日のテーマと中心となる3つの問い
13:24 保田さんが中小企業研究を始めた背景
18:08 中小企業研究の困難さと重要性
24:07 中小企業におけるマネジメントの実態と学習メカニズム
36:23 質疑応答
41:53 「学習する管理職の3要件」をめぐるディスカッション
55:44 中小企業に必要な「良いマネージャー」の要件とその学び方とは?
1:13:40 「良いマネージャー」をどのように育成すればよいのか?
1:29:02 今後のイベントお知らせ

<今週のポイント>

  • 本日のテーマは「中小企業におけるマネージャー育成」。ゲストに保田江美さん(国際医療福祉大学准教授)をお招きし、保田さんが著者の一人を務めた書籍『中小企業の人材開発』の内容をもとに、コメンテーターとして吉野拓人とともに中小企業における人材育成の課題と対処法を議論する。
  • 昨今、中小企業が自社の人材開発に力を入れる機運が高まっている。他方で、人材開発に困難さを経営上の不安要素に挙げる企業も多く、中小企業のマネジメントの実態と学習メカニズムを明らかにするのことが、書籍『中小企業の人材開発』の目的だった。
  • 一般的に、一人の人間が管理できる人数は5~6名が上限と言われている。しかしながら、日本の管理職が抱える部下の数は平均10.18名と大幅に超過している。その他、部下とのコミュニケーションの機会は面談の割合が多く、日常的会話が比較的少ないこと、個人プレー型の管理職は業務能力が伸びにくい傾向にあることなどが明らかになった。
  • また、マネージャーの育成に力を入れたいと考える経営者は多いものの、期待通りの結果を出せていないと感じる管理職の割合は34.4%に上ることがわかった(一般従業員は13.2%)。
  • 管理職の学習メカニズムは、「研修で得た学びを共有したり、仕事に適用したりする」「4年目以降に挑戦的な仕事をする」「面談の頻度を高めるなど、日々の会話頻度を上げる」などの要因によって促進される。
  • 上記のことから、「外で学んだことを共有し、仕事に活かす」「挑戦的な経験に若い頃からチャレンジする」「経営者(経営陣)とのコミュニケーション機会を持つ」の3点が、よく学ぶ管理職の条件といえることが判明した。
  • また、管理職を育てる上の重要なポイントとして「育成を早期に行い、経験学習を促す」や、「育成支援を経営層が行いサポートする」、「研修で学んだ内容をメンバーに共有したり、実践したりする場をもたせる」ことが挙げられる。
  • 大企業在籍時はマネージャーになることに後ろ向きだったと吉野。プレイヤーとマネージャーのバランスの葛藤は常にあったが、「人が変わる瞬間」に立ち会ったことから、その面白さに繋がっていたという。また、できることの多いマネージャーがあえて待つという態度が重要だと保田さん。
  • ロールモデルのモデルとの向き合い方としては、「完璧な人」を目指し、憧れるよりも、良いところと悪いところの双方を捉えながら、自分のに合った性質を選択的に学び取っていくことが効果的であると考えられる。
  • マネージャーの「早期育成」のポイントは、経験学習をしっかり回せるように機会提供を行うことである。経験学習をプレイヤー時代から習慣化しておくことで、マネージャーになってからも学び続けられる土台として機能する。

今回のゲストは『中小企業の人材開発』の著者の一人である保田 江美さん(国際医療福祉大学 准教授 ※収録当時)。また、MIMIGURIから大企業とスタートアップでマネジメント経験を持つ吉野拓人が登壇し、保田さんが解説する学術的な理論を実務の観点から捉え直し、知見を形成していく構成のもと行われました。

保田さんの話題提供の冒頭で語られた、「日本の企業のうち98.9%が中小企業であるにも関わらず、その研究はほとんど行われていない」というのは、まずひとつ衝撃的な事実と言えるのではないでしょうか。かなり極端な言い方をすれば、多くの中小企業は場当たり的に実践を行っていると言えるかもしれません。

以前、経営学者・服部泰宏さん(神戸大学大学院経営学研究科准教授)をゲストにお招きして開催されたイベントでもテーマになっていた通り、経営学では研究と実務との間に溝が生まれてしまうことが少なくなくありません。

▼組織行動論・研究と実務の関わり合い

中小企業におけるマネージャーの育て方

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記事はこちら。

▼経営学は現場の“役に立つ”のか?良い研究と実践を方程式から考える

経営学は現場の“役に立つ”のか?良い研究と実践を方程式から考える

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正しい理論やデータを参照し、実務に活かしていく中では、もちろん、時には納得いかないことや、強い葛藤が生まれることもあるかと思います。しかしながら、それらを粘り強く引き受けながら、多角的に自らの実践を検討し続ける姿勢が重要になるはずです。今回のイベントも、まさしく理論を踏まえた上で吉野から実務における葛藤が語られるなど、理論と経験の間にある知を紡ごうとするコミュニケーションが印象的なイベントとなりました。ぜひご覧ください。

■イベント概要

日本の企業数の99.7%,従業員数の68.8%が中小企業とも言われる中、中小企業の人材育成に特化した知見はあまり多くみられません。他方で、中小企業は特有の「人が育ちにくい構造」を抱えており、大企業やスタートアップで用いられている知見だけでは、人材育成を行っていく上での限界があります。

具体的には、中小企業は大企業と比べて研修が少ないことやトップダウンの意思決定に依存してしまうことが多く、それによりマネージャーの育成に力が入れられず、結果的にマネージャーが育たないままマネジメント業務にあたることでその部下が育たない、ひいてはマネージャー候補も育たない…といった負の循環を抱えやすい構造にあるのです。

こうした状況を打破するには、中小企業ならではの人材開発の要点を押さえておくことが必要です。上述した内容からも明らかなように、その要はマネージャーが握っていると考えられます。中小企業における良いマネージャーの要件とはなんなのでしょうか?はたまた、マネージャーを、どのように育成していけばよいのでしょうか?

今回は、6年間の中小企業の研究を経て2021年に出版された『中小企業の人材開発』の著者の1人である保田 江美さん(国際医療福祉大学 准教授 ※収録当時)をゲストにお招きし、中小企業やスタートアップでのマネジメント経験をもつ吉野拓人(株式会社MIMIGURI マネージャー/ブランドデザイナー)とともに、「中小企業におけるマネージャーの育て方」を探究していきます。ぜひお気軽にご参加ください。


出演者

東南 裕美
東南 裕美

リサーチャー / ファシリテーター

立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科博士前期課程修了。立教大学大学院経営学研究科博士後期課程在籍。人と組織の学習・変容に興味を持ち、組織開発が集団の創造性発揮をもたらすプロセスについて研究を行っている。共著に『M&A後の組織・職場づくり入門:「人と組織」にフォーカスした企業合併をいかに進めるか』がある。

吉野 拓人
吉野 拓人

株式会社MIMIGURI

保田 江美
保田 江美

国際医療福祉大学 准教授(収録当時)