事業と個人の望ましい未来が合致するには?:ビジョン創出のパラダイムシフトと向き合うヒント
事業と個人の望ましい未来が合致するには?:ビジョン創出のパラダイムシフトと向き合うヒント

事業と個人の望ましい未来が合致するには?:ビジョン創出のパラダイムシフトと向き合うヒント

2022.09.09/5

時代の流れとともに、ビジネスパーソンの前提となる考え方や価値観は変わりつつあります。CULTIBASEでは、先日開催したイベント「現代組織におけるマネジメントの役割を捉え直す:マネージャーが向き合う4つの命題が生む矛盾とは?」の内容をもとに、こうしたマネジメントのパラダイムシフトを以下の見取り図で捉え、その結果生じる「4つの矛盾」こそが現代のマネージャーの困難さを生む要因となっていると解説してきました。

CULTIBASEイベント「現代組織におけるマネジメントの役割を捉え直す:マネージャーが向き合う4つの命題が生む矛盾とは?」より

また以下の記事を通してそれぞれの矛盾と向き合うためのヒントを紹介しています。

今回最後に取り上げるのは、「未来の矛盾」と呼ばれる、事業や所属する人々のビジョンを描く際に立ちはだかる困難さについて。その発生原因や対処するためのキーワードをお届けします。

CULTIBASEイベント「現代組織におけるマネジメントの役割を捉え直す:マネージャーが向き合う4つの命題が生む矛盾とは?」より


「未来の矛盾」とは何か?:事業と人々の“望むべき姿”の両立における困難さ

組織の中で人々が前向きに協働していくためには、所属している一人ひとりが事業のビジョンを明確に理解し、自らの数年後のキャリアと重ね合わせられるような状況をつくることが重要です。

しかしながら、前提としてビジョンというのはあいまいなものであり、何かしらの強い思いがなければ明確に描くことは困難です。また明確な思いあったとしても、他者から共感や理解が得られなければ独りよがりなものになってしまいます。

ましてや事業と個人の双方のビジョンを両立させるとなると、膨大な数の「変数」と向き合わなくてはなりません。よくある失敗例としては、事業部長や経営層が事業ビジョンを描いたは良いものの、それがあまりにも事業としての成功だけに目が向いてしまっているがゆえに、所属するメンバーからの共感を得られず、理念としての求心力を失ってしまうことが挙げられます。また、逆に所属メンバーのありたい姿を反映させたビジョンづくりに注力しすぎるあまり、事業推進上求められるタフなミッションを乗り越える事ができず、事業目標が“絵に描いた餅”になってしまうこともよくあります。

事業と人々のあるべき姿を重ねるためには、両方の視点にバランス良く目を向け、組み立てていくことが重要です。昨今では人材を資本として捉える人的資本経営が注目を集めていますが、人的資本を大事にすることと同時に、それらを事業ビジョンにいかに結びつけるかが、次のステップとして重要になってくることでしょう。

時に異なるベクトルを持つ事業と人のビジョンの両方と同時に向き合うことは容易ではありません。CULTIBASEでは、こうしたビジョンづくりにおいてマネージャーが直面するタイプのジレンマを「未来の矛盾」と名付け、他のものと区別して捉えています。

「未来の矛盾」はなぜ生まれるのか?:事業と人のビジョンにおけるパラダイムシフト

これまで日本社会では、20世紀後半以降、特に高度成長期においては「然るべき市場に資源を投下すれば、その分だけ事業が成長する」といった考え方が主流でした。一定の“勝ち筋”があるのであれば、そのために必要な能力を持つ人を画一的に採用・育成すれば、大きな問題は起こりません。市場拡大によってポジションが不足することもなく、他の人と同じようにキャリアアップする保障が得られるため、いわば「仕事が人を創る」ような流れができあがっていたのです。

しかしながら、人々のキャリア観が多様化し、不確実性の時代の中で事業としての”勝ち筋”が見えにくい現代においては、選択可能な未来のパターンが無数に存在します。先ほど述べた事業と人々の望むべき未来を両立させたビジョンづくりの困難さは、こうしたパラダイムシフトに組織のシステムや人々の認識が追いついていないという側面もあり、生じています。

CULTIBASEイベント「現代組織におけるマネジメントの役割を捉え直す:マネージャーが向き合う4つの命題が生む矛盾とは?」より

「未来の矛盾」と向き合うためのキーワード

こうした未来の矛盾と向き合うために何ができるでしょうか。イベントでは、以下のキーワードについて理解を深め、実践していくことが重要だと語られていました。

CULTIBASEイベント「現代組織におけるマネジメントの役割を捉え直す:マネージャーが向き合う4つの命題が生む矛盾とは?」より

キーワード(1):CHRO・HRBP

「未来の矛盾」と向き合うためには、CHRO(最高人事責任者)やHRBP(HRビジネスパートナー・戦略人事)といった人を立て、総合的な観点から組織としての仕組みづくりを推進していく体制を整えていくことが重要です。

キーワード(2):エグゼクティブ・ファシリテーション

「経営層・経営チームが不確実性と向き合っていくための姿勢をいかに持てるか」といった観点も、ビジョンづくりの成否を大きく左右します。経営者としての鎧を脱ぎ、一人のビジネスパーソンとして何を思い、どうしたいのかを率直に話す場づくりや働きかけを行うこと。CULTIBASEではそのための方法論として「エグゼクティブ・ファシリテーション」を提唱し、探究を進めています。

キーワード(3):パラドキシカル・リーダーシップ

あらゆる場面で板挟みになることが多く、その中でも多くの意思決定をくださなければならないマネージャーが「矛盾」と向き合うためには、どのような姿勢を身につける必要があるのでしょうか。先日開催したイベント「組織の『矛盾』を手懐けるリーダーシップの最新知見」では、立教大学経営学部准教授・舘野泰一さんをゲストにお招きし、リーダーシップの観点からマネージャーが日々の矛盾と向き合うための知見を語っていただきました。

「4つの矛盾」を“点”ではなく“面”で捉え、向き合っていく

これまで全4回の記事を通して、現代組織が抱える4つの矛盾について、その概要を個別に解説する記事をお届けしてきました。

しかしながら、実際にはこれらの矛盾は明確に分かれて存在しているわけではなく、互いに関連し、影響しあっています。そのため、一つひとつに対して個別に対処しようとしても、もぐらたたきのようになってしまい、疲弊してしまいます。重要なのは、これらの矛盾について、それぞれの存在を認識しながらも、”点”ではなく、”面”として対処することです。

「事業ビジョン」「目標達成」「個人キャリア」「人員リソース」など、組織の様々な要素について幅広く理解を深めた上で、それらの状況を俯瞰的に捉え、必要な知を編み上げていくことが、これからのビジネスパーソンには求められます。そのためには「学習」と「共創」の姿勢が必要不可欠です。

CULTIBASEイベント「現代組織におけるマネジメントの役割を捉え直す:マネージャーが向き合う4つの命題が生む矛盾とは?」より

もちろん簡単にできることではありませんし、完璧に行うのは無理なことかもしれません。しかし、たとえ完璧ではないとしても、少しでもより良い状況を目指し、そのための探究を楽しめるようなマインドや組織の風土をつくっていくことが、矛盾をしなやかに向き合い続ける組織や人を育てていく上で、何より必要なことなのではないでしょうか。


本記事は、会員制オンラインプログラム「CULTIBASE Lab」で開催されたイベント「現代組織におけるマネジメントの役割を捉え直す:マネージャーが向き合う4つの命題が生む矛盾とは?」の内容を一部記事化したものです。90分におよぶイベントの模様は、下記のアーカイブ動画より全編ご視聴いただけます。

執筆:水波洸

関連するおすすめ

気になるコンテンツからチェックしてみてください

記事

動画

パッケージ

テーマごとにコンテンツを厳選してまとめました。

もっと見る