メソッドを機能的に活用し、メインワークの幅を広げるコツ:連載「ワークショップ・ファシリテーションのヒント」第8回
メソッドを機能的に活用し、メインワークの幅を広げるコツ:連載「ワークショップ・ファシリテーションのヒント」第8回

メソッドを機能的に活用し、メインワークの幅を広げるコツ:連載「ワークショップ・ファシリテーションのヒント」第8回

2021.04.13/15

本連載「ワークショップ・ファシリテーションのヒント」では、「明日の実践ですぐ使える」ことをコンセプトに、実践に役立つちょっとしたファシリテーションのヒントを紹介します。

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第8回となる今回は、すでに様々な実践者が得意とするメソッドをいくつか紹介しながら、そのメソッドを使いこなすためのファシリテーションのポイントを紹介します。第8回となる今回は「メソッドを機能的に活用し、メインワークの幅を広げるコツ」についてお話しします。

熟達したワークショップ実践者の多くは、自身のキャリアの中で磨き上げてきた得意技とも言うべきメソッドを持っています。現場での実践経験を積んでいく中で、自分に合った方法を見つけ、一つの「型」として洗練させていくことは、ファシリテーションを一つの「技芸」として見立てた時に、王道的な上達プロセスといえるでしょう。噺家や歌舞伎役者などが、先人たちからの「型」の伝承を重要視するのと同様に、ファシリテーションにおいても、最初に自分の得意なやり方を確立し、自信につなげていくことが、腕を磨いていく上で効果的であることは間違いありません。

しかしながら、ワークショップ実践においては、こうした「型」に頼りすぎることに否定的な向きも見られます。ワークショップの基本的な思想では、既存のやり方をトップダウン的に押し付け、学ばせるような学習のあり方ではなく、参加者がボトムアップ的に意見を出し、自ら学ぶための場を設えるオーダーメイド的な姿勢が大事にされています。そのため、ある程度確立された既存の方法論を使い回すような振る舞いは、ワークショップ本来の意義に反するのではないか、といった主張も、至極まっとうなものだと言えるでしょう。実際、あるワークショップ・プログラムが特定の状況や目的に対して効果的だったからといって、変数の異なる他の場面でもそのプログラムをそのまま実施してしまうと、ただの劣化版のような実践になってしまいますし、ワークショップの本来の価値が貶められる事態になりかねません(こうしたワークショップの「パッケージ化」に対する懸念は、2012年刊行の『プレイフル・ラーニング』(上田信行, 中原淳)や、2018年刊行の『ワークショップをとらえなおす』(加藤文俊)などで詳しく取り上げられています)。

ワークショップ実践における「型」との向き合い方を考える中で大切なのは、一つのやり方やメソッドに固執しすぎないことです。何か得意なスタイルやメインワークの型を身に着けたら、今度は違う方法論を試してみる。その入口として効果的なのが、他の人が得意とするやり方を一度試しにやってみることです。複数の方法から、それぞれのエッセンスを学び取り、時には自分なりに混ぜ合わせながら、オリジナリティ溢れる実践を可能にする幅の広さを身につけること。そのようなフットワークの軽さと柔軟さが、豊かな実践力を持つファシリテーターには求められるのではないでしょうか。

今回の記事では、ワークショップを学び始めた人が最初の「型」として身につけたり、あるいはすでに何かしらの「型」に精通した方が次の方法を見つけたりする上で役立つファシリテーションのヒントをお届けします。ぜひご覧ください。

■今回紹介する4つのヒント
「ジグソーメソッドを活用する」
「ブレインライティングを活用する」
「テーブルシャッフルをうまく使う」
「グループワーク中に“スパイタイム“を入れる」


「ジグソーメソッドを活用する」

【状況】
さまざまなバックグラウンドを持つ参加者が集まり、グループワークを行うことで、多種多様な意見に触れながら学びを得ていくプロセスが、ワークショップの大きな魅力のひとつです。また、ファシリテーターはその効果を最大化するために、参加者が対等な立場から自由に、それぞれの考えを発言できるように働きかける役割を担い、その一環として、参加者の一人ひとりが対等な立場で自由に思ったことを語れる“フラットな場”を創ることが重要です。しかしながら、役職や年齢、職業の違いなどから、参加者が目の前の相手次第で発言を控えてしまうことも多く、“フラットな場”と一口に言っても、その実現は容易ではありません。

【行動】
“フラットな場”を創るためには、参加者の一人ひとりが明確な役割を自覚し、自分が場に関わる意義を見出しながら取り組める環境づくりを意識することが大切です。そしてそのための方法として、「ジグソーメソッド」が有効な場合があります。ジグソーメソッドとは、あえてグループ内の一人ひとりに異なる種類の情報を持たせることで、「参加者同士が教え合わないと解決しない状況」を意図的に作り出し、協働関係を構築する手法です。この方法によって、参加者が自分が参加する意義を意識しながら、自尊心を強く持った状態で精力的にワークに取り組むことができるのです。  

「ブレインライティングを活用する」

【状況】
質の良いアウトプットを生み出すためのプロセス設計として、まずはアイデアを思いつくままに出し尽くしたのち、出てきたものの中から筋の良いものを選ぶと良いとされています。また、最初の発散的に意見を出す段階において、最もよく用いられる手法に、ブレインストーミングがあります。しかし、ブレインストーミングでは、例えば同じ職場の上司が目の前にいる時など、普段の関係性が意識されるような状況下では、刺激的なアイデアを思いついたとしても、意見の衝突を恐れるあまり、安易に提示することが憚られてしまいやすくなります。

【行動】
そのような状況においては、ブレインライティングという手法を用いることで、多様な意見を安全に表出し、議論に活かせるケースがあります。ブレインライティングでは、まずは、一人一枚、異なる問いが書かれた紙を配布します。それらの問いに対する回答を記入してもらったのち、紙を左隣の人に受け渡します。他方で、自分の元には右隣の人から渡ってきた、先ほどとは違う問いの書かれた紙が回ってきます。その問いにも自分なりの答えを記入し、また左隣の人に回します。全ての紙に記入し終えたら、ファシリテーターが紙を回収し、出てきたアイデアの共有しながら、コメントを加えていきます。この手法によって、普段の関係性では出しづらいアイデアも場に活かされやすくなり、ブレイクスルーをもたらすきっかけとなりうるのです。

「テーブルシャッフルをうまく使う」

【状況】
ワークショップでは、メインワークをはじめ、グループワークを実施することが多く、同じメンバーと長時間共同作業を行うことも珍しくありません。しかしながら、ずっと同じメンバーで共同作業を行なっていると、多様な視点から意見を広げていくことが難しくなり、議論が停滞してしまうことがありえます。

【行動】
ファシリテーターは、各グループの話し合いのプロセスに耳を傾け、グループ内で多様な視点からの意見が交わされているかを観察する姿勢が大切です。その際、話題の固定化や熱量の低下が複数のグループで起こっているようであれば、打開策として、グループメンバーをシャッフルさせる「テーブルシャッフル」が有効な場合があります。

テーブルシャッフルによって、多様な人との接点を増やし、これまでと異なる視点に触れることで、自らのアイデアの批判的な検討や、多角的に思考を深めていくきっかけが生まれやすくなります。その際、「シャッフルしっぱなし」場合と、「シャッフルし、ある程度ワークを行ってもらったのちに、また元のグループに戻す」場合の2種類の実施パターンが存在します。どちらにもメリットとデメリットがありますが、何度もシャッフルを行う場合、参加者が学びを深める上で重要な“グループに対する帰属意識”を失ってしまう危険性があり、特に注意を払う必要があります。

「グループワーク中に“スパイタイム”を入れる」

【状況】
ワークショップでは、「創る活動」のメインワークをはじめ、様々な場面でグループワークを実施することがよくあります。しかしワークの制約が甘かったり、グループメンバーの相性や専門知識の偏りがあったりすると、グループワークの途中で議論が煮詰まってしまい、停滞してしまうこともあります。グループワークが停滞してしまった時、ファシリテーターは議論に揺さぶりをかけたり、新たな視点を導入したりすることで、グループワークを再び活性化しなくてはなりません。その際、別の視点から問いかけをする、考えのヒントを提示するなどが一般的なやり方ですが、停滞しているグループが一つであるならともかく、複数あった場合には対応が難しいのが実情です。

【行動】
複数のグループワークが停滞していると感じたときには、グループメンバーを一時的に入れ替え、場の視点を攪拌させることが効果的です。闇雲にメンバーを入れ替えてもチーム内で構築した人間関係が崩れてしまいますので、あくまで一時的にシャッフルすることが有効です。たとえば、「ここで、スパイタイムを設けましょう」と演出をして、グループのうち1名をスパイ役として任命し、隣のグループに派遣するとよいでしょう。グループを移動する最低限の必然性をつくるために、「スパイ役の人は、コンサルタントのフリをして、隣のグループにアドバイスをしてあげましょう。盗める視点があれば、こっそり持ち帰ってくださいね」などと文脈を設定し、グループ間でメンバーを入れ替え、視点を交錯させることを楽しめるように教示することが重要です。視点が攪拌されるだけでなく、他グループとの差別化も意識できるためよい刺激になるでしょう。

今回のヒントは以上です。ぜひ次回のファシリテーションで試してみてください。

・参考文献
上田信行, 中原淳(2012)『プレイフル・ラーニング』三省堂
加藤文俊(2018)『ワークショップをとらえなおす』ひつじ書房

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