身体知で参加者や場の状態を調整する、伝え方・関わり方のコツ:連載「ワークショップ・ファシリテーションのヒント」第9回
身体知で参加者や場の状態を調整する、伝え方・関わり方のコツ:連載「ワークショップ・ファシリテーションのヒント」第9回

身体知で参加者や場の状態を調整する、伝え方・関わり方のコツ:連載「ワークショップ・ファシリテーションのヒント」第9回

2021.04.29/15

本連載「ワークショップ・ファシリテーションのヒント」では、「明日の実践ですぐ使える」ことをコンセプトに、実践に役立つちょっとしたファシリテーションのヒントを紹介します

メソッドを機能的に活用し、メインワークの幅を広げるコツ:連載「ワークショップ・ファシリテーションのヒント」第8回

前回の記事では、熟達したワークショップのファシリテーターの多くが「得意技」ともいうべきメソッドを持っていることに触れながら、「型」の存在を意識しつつ、その「型」に囚われすぎないようにすることが重要だと解説しました。また、こうした話は何も方法論に限った話ではありません。例えば、参加者に何かを伝える際の声の出し方や抑揚の付け方、表情、仕草など、参加者との関わり方にも、熟達したファシリテーターの多くがそれぞれ得意な「型」を持っています。

ワークショップ・ファシリテーターの重要な役割の一つに、「参加者の学びと創発を促進すること」があります。しかし、その役割を全うするために得意とするアプローチは、熟達者であっても一人ひとり異なります。参加者に積極的に関わり、時には鼓舞するようにして意欲を引き出すやり方を得意とするエキスパート実践者がいる一方で、できる限り傾聴に徹しながら、参加者が主体的に関わろうとするまで待つことを信条とする方もいます。こうしたファシリテーション・タイプの違いは、その人の特性や嗜好、そしてワークショップ観などによるものであり、決して優劣をつけられるものではないというのも、抑えておくべき重要なポイントです。

私たちの身体や性格は一人ひとり異なっています。そのため、ファシリテーションという身体的技芸においても、それぞれが得意とする動きが異なっていることもある意味当然と言えるでしょう。しかしながら、同じ身体性を伴う活動であるバッティングや泳ぎ方でも、教本を開けば「基本形」が載っているように、ファシリテーションにおいても、多くの実践者が大切にしている身体的なポイントがいくつか存在すると考えられます。

そうした背景から今回は、「身体性」をテーマに、伝え方や関わり方について考える切り口になりそうなファシリテーションのヒントを集めてみました。ただし、今回ご紹介するヒントの中にも、人によっては納得できない、あるいは「あえてそれをしないようにしてる」という実践者もいるかもしれません。ヒントはあくまで思考の切り口として、実践者としてこれらの振る舞いの個人的な是非に思いを巡らせながら、ご覧いただけたらと思います。

自分がどんなファシリテーションを得意としているのかは、誰も教えてくれません。様々な経験を積みながら、自分で発見するしかなく、逆に言えば、そのように経験によって自分に合ったファシリテーションのあり方を見つけた人だからこそ、熟達者と呼ばれるのだと思います。まずは基本に従いながらやってみること。慣れてきたら、その型を少しずつ崩しながら、自分に合ったやり方を模索すること。結局のところ、基本と応用の往復運動の中で葛藤しながらやっていくことが熟達する上では一番の近道なのだと思います。ぜひヒントを読むことで、自身が普段のファシリテーションにおいてどんな身体の使い方を行なっているか、意識し、考えを深めてみてください。

■今回紹介する4つのヒント
「自分のファシリテーション・タイプを意識する」
「声の高さと口調の速さを使い分ける」
「参加者が主体的な行動をイメージしやすい言い方を心がける」
「エンターテイナーとしての役割を意識する」


「自分のファシリテーション・タイプを意識する」

【状況】
ワークショップのファシリテーションに関わるものであれば、誰もが“ファシリテーター”として一人前になり、熟達したいと考えるかと思います。しかしながら、そのとき“ファシリテーター”として思い浮かべられる人物像は、人によって様々です。物腰が柔らかで、笑顔で参加者の話に耳を傾け、ひとつひとつの意見を受け止めながら議論や対話の交通整理をしてくれる存在を思い浮かべる人もいるでしょうし、他方で、モチベーションが低い集団に対してやる気を焚きつけ、エンパワメントしていくリーダー的な存在を思い浮かべる人もいるかもしれません。思い浮かべる像が自分自身のパーソナリティと合致していればよいですが、そうでなければ熟達の道は困難なものとなってしまうでしょう。

【行動】
ファシリテーターと一口に言っても、様々なタイプが存在します。実際に熟練したファシリテーターをみてみても、場に対して自らの提案や切り口を持って積極的に働きかけていく主導型のファシリテーターと、場から立ち現れる意見に共感し受け止めながら民主性を重んじる傾聴型のファシリテーターとに大きくタイプが分かれます。また場と関わるコミュニケーションのスタイルも、論理的なのか、感情的なのか、それによってクールな印象のファシリテーターとホットな印象のファシリテーターが存在します。自分の本来的なコミュニケーションのパーソナリティをよく自覚し、自分に合ったタイプを目指すことが熟達の近道です。

「声の高さと口調の速さを使い分ける」

【状況】
ワークショップにおいて、ファシリテーターの声の大きさ、ペース、トーンなどは、参加者の思考や感情に一定の影響を与えます。たとえば初心者の場合、不安や緊張によって、むやみに早口になってしまったり、抑揚のない口調になったりする場合があります。たとえば同じワークショップのなかでも、参加者がまだ緊張していて動機付けが必要となる「イントロダクション」と、新たな情報をインプットする「知る活動」と、活動を振り返って日常に学びを持ち帰る「リフレクション」のパートでは、場に必要な雰囲気やテンション、時間の使い方は異なります。

【行動】
ワークショップの場面や目的に応じて声のトーンを微調整できるようになると、実践の幅が広がります。たとえば、普段よりも高い声で喋れば、テンションの高さから活気を演出することができます。また、話し方のペースを速くすれば、場の緊張感を高めて、参加者の注意を集めることができるでしょう。高い声でも、ゆっくりと話せば優しく大らかな印象を与えることに繋がります。低い声でゆっくり話せば落ち着いた印象に、低い声で速いペースで話せば、仕事ができるイメージを与え、説得力を演出できます。もともとの声の高低やベースになるため、すべてはコントロールできないと思いますが、イントロダクション、アイスブレイク、知る活動、創る活動、発表、リフレクション..それぞれの場面で、目的にあわせ、また参加者の様子を観察しながら、自身の声を通じて場の雰囲気をコントロールすることを意識してみましょう。

「参加者が主体的な行動をイメージしやすい言い方を心がける」

【状況】
ワークショップの大きな特徴の一つに、参加者一人ひとりの主体的なコミットメントを起点として学習や創発を生み出していく点が挙げられます。また、ファシリテーターはその前提の上で、参加者が活動に没頭し、望ましい成果が得られる場やプロセスの設計を担っています。ところがファシリテーターによっては、自覚のあり・なしに関わらず、自身の成果責任を果たそうと気負いすぎるあまり、プログラムの進行上都合の良い言動を”させよう”とする自分本位な態度を取ってしまう場合があり、こうした態度は、むしろ参加者に受動的な姿勢を形成させてしまいかねません。

【行動】
ファシリテーターの何気ない言葉遣いが、参加者の主体性に影響を与える場合があります。例えば、グループディスカッションを行なう際にも、単に「5分間話し合ってください」と指示するのではなく、「5分間、一旦皆さんにお預けしますので、話し合ってみてください」といった言い方をすることで、参加者に対して、場が参加者自身に委ねられている自覚を促すことが可能となります。ファシリテーターとしての芸風の違いもあり、参加者との関わり方に絶対的な正解があるわけではありませんが、参加者がただ出された課題に取り組むだけであればワークショップとして行なう意味がないため、ファシリテーターすら予想だにしない作品が生まれるような関係性づくりを意識した振る舞いを心がけると良いでしょう。

「エンターテイナーとしての役割を意識する」

【状況】
ワークショップでは多くの場合、技術力の向上やメソッドの導入など単純な方略では解決不可能な複雑な課題を解決するための手法として用いられます。そうした中で、特にクライアントワークでは、ファシリテーターが成果を得ることに対して真剣であるがゆえに、シリアスで重苦しい空気のまま進行してしまうことがあります。こうした空気の中では、参加者の気軽な発言が抑制されてしまうことから、アイデアの多様性が損なわれ、かえって成果に繋がりにくくなってしまうことが懸念されます。

【行動】
前提として、ワークショップでは気兼ねない発言が許される場だからこそ、創造的な思考やコラボレーションが促進されることをよく理解しておくことが大切です。そしてそのような雰囲気は、基本的に笑いとユーモアによって生み出されます。そのためファシリテーターは、良い成果を目指すからこそ、参加者と自分自身が十分に楽しめるような、プレイフルな場やプロセスを演出することが重要となります。ただし、相手を楽しませようとするあまり、ワークショップの本来の趣旨から大きく逸脱したワークを取り入れたことで学習が深まらないケースも多く、また、扱うテーマやファシリテーターのタイプによってもエンタメ性が求められる場合とそうではない場合があるため、その点に関しては注意が必要です。

今回のヒントは以上です。ぜひ次回のファシリテーションで試してみてください。

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