著者と読み尽くす『組織変革のレバレッジ』の全体像

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約65分

組織をつくる

#組織変革論
#組織学習
#組織文化
東南 裕美
東南 裕美
安藤 史江
安藤 史江

今回の古今東南アノテートでは、組織変革の際に起こりがちな「困難」に着目し、変革のヒントを示した書籍『組織変革のレバレッジ:困難が跳躍に変わるメカニズム』著者の安藤史江さんをゲストにお迎え。本書の内容を元にした「問い」を起点に、トークを展開しました。

安藤先生は「組織変革は困難ながら、一貫した努力を行い困難を耐え忍ぶことで、突破点が訪れる」と語ります。変革時には自らの方向性を信じつつ、新たに出現する事象を受け入れる柔軟性が必要であると述べました。また、組織変革の成功には「高次学習」が行われる必要があり、本書の特徴として「パラドックス」を変革のレバレッジポイントとして取り上げます。「パラドックスを追求することで、組織の価値観の転換が可能」と安藤先生は述べ、終盤では、組織変革の困難さを経験している人へアドバイスを送りました。

※本配信は、「組織変革のレバレッジ:変革の見取り図としての『整合性モデル』」をご覧いただいてから視聴することでよりお楽しみいただけます。

組織変革のレバレッジ:変革の見取り図としての「整合性モデル」

組織変革のレバレッジ:変革の見取り図としての「整合性モデル」

「著者と読み尽くす『組織変革のレバレッジ』の全体像」のチャプター

02:36 『組織変革のレバレッジ:困難が跳躍に変わるメカニズム』について
05:24 『組織変革のレバレッジ』出版までの経緯
18:32 本書について6つの問い
20:10 組織変革の「困難」を「跳躍」に変えるには?
29:44 「よい組織変革」と「よくない組織変革」の分かれ目とは
40:34 組織変革のレバレッジ(切り替えスイッチ)としてなぜ「パラドックス」に着目したのか
50:52 組織変革の困難さに直面している人へのメッセージ
56:44 今改めて、本書に何か書き加えるとしたら何を書きたい?

「著者と読み尽くす『組織変革のレバレッジ』の全体像」のポイント

『組織変革のレバレッジ:困難が跳躍に変わるメカニズム』について

  • 今回の古今東南アノテートは、ゲストとして南山大学経営学部教授、安藤史江先生をお招きした。安藤先生の著書『組織変革のレバレッジ: 困難が跳躍に変わるメカニズム』(以下、『組織変革のレバレッジ』)は、組織変革の体系的なレビューや事例紹介を通して、変革のレバレッジポイント(著書の中では”切り替えスイッチ”と表現)を探し、その見つけ方を示している書籍。
  • 本書を紹介するのは2回目。前回本書を取り上げた「組織変革のレバレッジ:変革の見取り図としての『整合性モデル』」では、組織変革のモデルとして多く使われているナドラーとタッシュマンの「整合性モデル(コングルエンスモデル)」を主に紹介した。今回は本書の副題にもなっている「困難が跳躍に変わるメカニズム」という観点で紹介していく。
組織変革のレバレッジ:変革の見取り図としての「整合性モデル」

組織変革のレバレッジ:変革の見取り図としての「整合性モデル」

『組織変革のレバレッジ』出版までの経緯

  • まず安藤先生から、本書が書かれるまでの経緯を伺った。安藤先生が組織変革に興味を持ち始めたのは大学4年生の卒業論文がきっかけ。大学院でも組織変革をテーマにし、「CI(コーポレートアイデンティティ)活動」の研究を始める。しかし組織変革の研究は新規性を出すことが難しいと感じ、一時は組織変革の研究から離れ、他分野へ興味を向けたことも。その中で、組織学習論の研究分野にも出会う。
  • ビジネススクールで社会人向けに「組織学習論」を教えたこともあった。安藤先生は理論ベースでのアプローチを好んでいたが、「具体的にどんな成功事例があるのか」については詳しく知らなかった。そこでスクールの受講生に「(組織の)高次学習が実現した事例」についてレポートを書いてもらったところ、その中から興味深い事例を発見した。「これらの事例について世の中に発表をしないか?」と声をかけていったことがきっかけで本書は出版された。

組織変革の『困難』を『跳躍』に変えるには?

  • 東南が本書についての「問い」を提案し、それを通して本書の深掘りをしていく。書籍の中に書かれている部分と書かれていない部分の両方について議論した。
  • 1つ目の問いは「組織変革の『困難』を『跳躍』に変えるには?」。安藤先生は、組織変革は、実際には困難の連続であると話す。「もうダメだ…」と思ってしまいがちだが、一度目標を掲げたら一貫した努力を重ね、その中で困難を耐え忍ぶことが重要と語る。そして、ある「閾値」に達すると突然「目の前がひらける瞬間」が訪れるという。
  • 安藤先生はまた、変革過程での方向性について触れた。不確実性のある中で、自分たちが信じる方向に進むことの重要性を強調。しかし、それは自分たちを盲信することではなく、五感を研ぎ澄ませ、周囲の状況や必要性に敏感に反応しながら、「出現する新たな事象」を受け入れる能力が求められると述べた。
  • 困難を跳躍に変えやすくするポイントを問われた安藤先生は「反対者が出ること」を挙げ、それは大きな変革が起きている証拠だと話した。逆に反対されない状態では、大きくは変革していないとみなす。それは高次学習には至っていない可能性が高く、低次学習のみが行われている状態である。
  • 低次学習(成果への効率的な改善を考える学習)と高次学習(行動の前提や価値観を問い直す深い学習)の違いを理解し、その適切な活用が組織変革には必要である。
  • 2つ目の問いは「『よい組織変革』と『よくない組織変革』の分かれ目とは」。
    組織変革は学術的にはニュートラルなもので、その結果は価値判断によるもの。時間の経過とともに組織変革の評価は変わる可能性があると安藤先生は話した。
  • 組織変革を成功させるためには、組織が望む方向に変化することが大切であり、そのためには組織アイデンティティの見直しが必要。良い組織変革を達成するためには、組織アイデンティティの見直し、ビジネスロジックの調整、そして内的整合性だけでなく、外的整合性を考慮する必要がある。

    【参考】ヒトと組織に強い経営人材になるための『新時代の組織づくり』

組織変革のレバレッジ(切り替えスイッチ)としてなぜ「パラドックス」に着目したのか

  • 続いての問いは「組織変革のレバレッジ(切り替えスイッチ)としてなぜ『パラドックス』に着目したのか」。本書では、組織変革のレバレッジとは「困難なフェーズから跳躍するためのスイッチのような存在」と説明されている。レバレッジを探す際には、組織内に存在する「パラドックス」を見つけ出し、それが変革の切り替えスイッチになるとの提案がされている。
  • 安藤先生は、センゲの『最強組織の法則(現:学習する組織)』でシステム思考に出会い、「一瞬にして好循環が悪循環に変わる」というシステムに衝撃を受け、興味を持った。好循環が悪循環に変わるのであれば、逆もあって然りだと考えたが、悪循環を好循環に変えるのは簡単ではなく、逆風の中を歩くようなもの。逆風を超えていくことを「閾値」に達する瞬間と表現しており、そこがレバレッジポイント(切り替えスイッチ)であると述べた。
  • 例として挙げたのは、組織目標と個人目標が矛盾する時。どちらかを優先してトレードオフの関係になるのではなく、最適なバランスを見つけ出すことが重要。「なぜ矛盾が発生しているのかを追及していくと、どちらも両立できる均衡点がどこかにある」と語った。
  • パラドックスを追及し、新たな視点でアップデートしたとき、高次学習ができたと考えることができる。この時、価値観の転換が起こり、それが切り替えスイッチになっている状態と言える。

    【参考】組織の「矛盾」を手懐けるリーダーシップの最新知見

組織変革の困難さに直面している人へのメッセージ

  • 終盤では「組織変革の困難さに直面している人に伝えたいこと」「今改めて、本書に何か書き加えるとしたら何を書きたい?」についてトークが展開された。
  • 反対や抵抗が起きている時には、案外いい方向に進んでいると捉えていいのだと安藤先生は語った。組織変革の動きが広がれば広がるほど反対者は出るもの。うまく変革をしたいと考えた時は、まずは「少数の絶対的な見方」を見つけることを勧めた。エビデンスとしての小さな成果(スモールウィン)を目指しつつも、人は感情で動く生き物なので「楽しそうに活動していること」が周りに伝わっていくことも重要だと話した。

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出演者

東南 裕美
東南 裕美

リサーチャー / ファシリテーター

立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科博士前期課程修了。立教大学大学院経営学研究科博士後期課程在籍。人と組織の学習・変容に興味を持ち、組織開発が集団の創造性発揮をもたらすプロセスについて研究を行っている。共著に『M&A後の組織・職場づくり入門:「人と組織」にフォーカスした企業合併をいかに進めるか』がある。

安藤 史江
安藤 史江

南山大学経営学部教授

名古屋大学経済学部卒業。東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。2000年に東京大学より博士(経済学)。専門は組織学習論、組織変革論。主要著書に『組織学習と組織内地図』(2001年、単著)、『組織変革のレバレッジ』(2017年、編共著)、『コア・テキスト組織学習』(2019年、単著)など。1998年に組織学会高宮賞(論文部門)を、2017年に第69回全国能率大会において経済産業省経済産業政策局長賞を受賞。企業やシンクタンクとの共同研究や研修講師に加え、行政の諸委員も歴任。大学ゼミでは産学連携活動にも注力。