探究と自己実現:自分らしさのマネジメント論

/

約62分

10/10(火)に開催した「探究と自己実現:自分らしさのマネジメント論」のアーカイブ動画です。本イベントでは、「探究と自己実現」をテーマにアカデミックの先行研究を紐解き、現代の組織やビジネスパーソンが置かれている状況とリンクさせながら、探究を起点とした豊かなキャリア形成や深い学習に繋がる知見をお届けしました。

チャットログはこちら
資料はこちら

「探究と自己実現:自分らしさのマネジメント論」のチャプター

09:58 チェックイン:働く中で「自分らしさ」を感じた瞬間は?
13:48 探究とはなにか?
23:35 キャリアにおける探究の意味
31:20 探究と自己実現
36:17 マズローの自己実現理論
47:40 存在動機を満たすための探究
53:23 自分らしさの探究が促進される組織の条件は?

「探究と自己実現:自分らしさのマネジメント論」のポイント

  • 登壇者でMIMIGURIリサーチャーの西村は「自己実現」は学部時代から慣れ親しんでいた重要なテーマであったと語る。また、就職した友人が「会社は自己実現する場ではなく稼ぐ場だ」というフィードバックを受けたことにもやもやしたエピソードを共有し、人生の多くの時間を占める働く場での自分らしさの探究を企業はどう支援していくべきかと問いかけた。
  • Cultibaseでは、「探究」をキーワードとしたコンテンツを多くお届けしてきた。「探究の戦略」では、探究とは物事の本質を明らかにしようとすることと紹介したが、今回はより原点に近いところまで遡り、デューイの定義が紹介された。
  • デューイの「探究」の定義そのものは難解だが、整理すると「不確定な状況」「推測的予測段階」「試験・点検・探索・分析段階」「試験的仮説の精密化段階」「検証段階」に分けて考えられると西村は語る。
  • 小川を渡りたいが靴や服を濡らしてわたりたくないのが「不確定な状況」であり倒木を橋にして川を渡るために、辺りをを見渡し使えるものを探し、倒木で渡れるのではないかという仮説検証を行った結果、「服や靴を濡らさず川を渡れる」という知識を獲得したのが「確定した状況」である。こうした経験があると、次に似たような状況が合ったときも過去の探究に基づき意思決定ができると語る。
  • キャリアにおいても、同様な探究ができる。例えばマネージャーに昇進したが、マネジメント方法がわからないのは「不確定な状況」である。そこから複数ある手段の中から本を数冊読む行為を推測、選択し、無知であることに気づき全体像を掴む本を購入し無知状況が払拭されてることで、マネジメントの見取り図を得て確定した状況に達することができると語る。
  • では、確定した状況に到達すると探究はそこで終わりなのだろうか?西村は、探究の成果として得られた知識は普遍のものではなくさらなる修正や改良がされていくもので、確定した状況は次の探究の始まりだと指摘する。
  • まとめると、探究とは人間が経験を通じて学習していく一般的な方法であり、不確定な状況に遭遇し続けることで新たな探究を始めると語る。では探究と自己実現はどのようにつながるのだろうか?
  • 西村は、不確定な状況には小さな不確定状況と大きな不確定状況の2種類あると語る。マネジメントがわからない、というのが小さな不確定状況だとすると、自分がマネージャーらしいのかどうかが大きな不確定状況だと指摘する。こうした自分らしさの探究、自己実現の探究を考えるにあたって、今回は代表的なマズローの議論を参照する。
  • マズローの自己実現理論では、自己実現とは「自分の潜在的な可能性や能力を最大限に開発・発揮して人間的に成長したい、個性を生かして創造的な価値を発揮することで生きがいを感じたい」とする欲求のことである。自己実現とはなりたい自分になることではなく、潜在能力がより発揮されている状態だと西村は指摘する。
  • マズローの欲求階層説では、D動機とB動機に分けられる。D動機は欠乏動機であり、満たされないことが生物としての不具合を産みうる基本的な欲求である。一方B動機は、存在動機でありそれ以上究極的なものに還元できないような本質的究極価値だとされる。企業における欠乏動機を満たすための支援は、表彰制度やピアボーナス等が行われてきたが、存在動機を満たすための支援も同様に必要だと西村は指摘する。
  • マズローは、個人の目標が会社の目標と合致してシナジーを起こし、個人の自分らしい仕事が組織の利益になるような、自己実現者で構成されている組織の理想像を「ユーサイキアンマネジメント」と呼んだ。西村は、MIMIGURIが新時代の組織づくりウェビナーで紹介した「新整合性モデル」はユーサイキアンマネジメントを実現するための見取り図となりうるのではないかと語る。MIMIGURIではここの自己実現を組織の成長に整合する探究支援施策「Quest」を開発しており、社内で試行錯誤的に実施していると述べた。

DIGTIONARYのバックナンバー

暗黙知の誤解と本質

暗黙知の誤解と本質

組織における「身体性」を再考する

組織における「身体性」を再考する

関連コンテンツ一覧

動画

ヒトと組織に強い経営人材になるための『新時代の組織づくり』

ヒトと組織に強い経営人材になるための『新時代の組織づくり』

チームを覚醒させる「問い」のデザイン:新時代のミドルマネジメントの真髄

チームを覚醒させる「問い」のデザイン:新時代のミドルマネジメントの真髄

探究の戦略:ビジネスパーソンのキャリアを拡げる新しい学び方

探究の戦略:ビジネスパーソンのキャリアを拡げる新しい学び方

出演者

西村 歩
西村 歩

東京大学大学院情報学環客員研究員。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。実践研究方法論が専門家。現在はコンサルティングファームに内在する実践知の形式知化やナレッジマネジメントに関する研究活動に従事。電子情報通信学会HCGシンポジウム2020にて「学生優秀インタラクティブ発表賞」、電子情報通信学会メディアエクスペリエンス・バーチャル環境基礎研究会にて「MVE賞」を受賞。

小田 裕和
小田 裕和

千葉工業大学工学部デザイン科学科卒。千葉工業大学大学院工学研究科工学専攻博士課程修了。博士(工学)。デザインにまつわる知を起点に、新たな価値を創り出すための方法論や、そのための教育や組織のあり方について研究を行っている。特定の領域の専門知よりも、横断的な複合知を扱う必要があるようなプロジェクトを得意とし、事業開発から組織開発まで、幅広い案件のコンサルテーション、ファシリテーションを担当する。主な著書に『リサーチ・ドリブン・イノベーション-「問い」を起点にアイデアを探究する』(共著・翔泳社)がある。