多角化戦略で人が育つ?!マネーフォワードCDOが語る組織づくりの最前線

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約68分

「不確実性の時代」の中でも大きな成果を出し、価値を社会に届け続けられる企業は、どのような組織づくりを実践しているのでしょうか。

「組織づくりCASE FILE」は、大きな変化の波に直面した企業の組織変革をテーマに、現代に求められる組織づくりの知見をお届けする番組です。

初回のゲストは、株式会社マネーフォワードCDO・伊藤セルジオ大輔さん。創業から約10年で飛躍的な成長を遂げ、現在50以上もの事業を擁する同社ですが、その中で様々な悩みに直面します。たとえば、

・事業規模が拡大するスピードにメンバーの成長が追いつかない。
・急速な人材の増加と多様化によって、既存の能力定義や評価制度が合わなくなってしまう。
・事業多角化により経営人材も多様化。経営チーム全体をまとめ上げることが困難に。

など。今回はこれらの課題解決に取り組んできた組織づくりの実践知について語り合いました。

■新番組「組織づくりCASE FILE」とは?
「組織づくりCASE FILE」では、組織変革プロジェクトのキーパーソンを毎回ゲストにお迎えし、プロジェクトパートナーを務めたMIMIGURIのメンバーとともに、そのプロセスやターニングポイントを語り合います。また、MIMIGURIが提唱する新時代の組織づくりの羅針盤「Creative Clutivation Model(CCM)」を用いて、新時代の荒波を乗りこなす組織のあり方を探究します。

「多角化戦略で人が育つ?!マネーフォワードCDOが語る組織づくりの最前線」のチャプター

00:00 今回の見どころ
01:22 イントロダクション
03:27 人材の多様化に適合した評価制度・能力定義策定の実践知
18:41管理職が”鎧”を脱ぐことの重要性
25:49 横断組織『Design Ops』の機能とは?
30:36 事業多角化を支える経営チームをいかにつくるか?
40:48 プロジェクトを「Creative Cultivation Model(CCM)」で振り返る
54:08 組織の”終わらない変化”とどう向き合うか?

「多角化戦略で人が育つ?!マネーフォワードCDOが語る組織づくりの最前線」のポイント

当事者同士がプロジェクトをふりかえる

  • ここ10年で飛躍的な成長を遂げ、現在50以上の事業を擁するマネーフォワード。今回はその多角化戦略の実践知を深堀りする。
  • セルジオさんは事業多角化が組織にもたらした新たな課題として、「デザイナーの職能が多様化し、評価や育成が困難になったこと」や「事業の成長・拡大スピードに人の成長が追いつかず、ギャップが生じてしまうこと」などを挙げる。また、それぞれの事業チームが自律的に活躍することが求められる一方で、その自律性の高さによって、チーム間の連携が難しくなってしまう側面もある。こうした課題に対して、人材が多様化する中でも運用可能な新たな評価制度・能力定義が必要となり、MIMIGURI・ミナベをパートナーとした最初のプロジェクトが発足した。
  • 事業多角化を推進する中で人材育成上のポイントとして、セルジオさんはバリエーション豊かな事業を”機会”として活用することが重要だと語る。また、ただ単に機会を与えるだけでなく、「その機会をどう捉え、活かすのか」を周囲と共通認識を得ていく姿勢が大切である。
  • 次のステップとして、新設した評価制度や能力定義に基づいたマネジメント研修を実施。研修のテーマは「鎧を脱ぐ」だったという。マネージャーは与えられた役割に応えようとするあまり、ついつい”鎧”を着込んで武装してしまい、その人らしさやいち個人としての考えや悩み、葛藤が見えづらくなってしまうことがある。研修では、セルジオさんがCDOを打診されてから1年間就任を保留し続けてきたエピソードが語られ、それがメンバーに気づきや触発をもたらしたエピソードが語られた。結果的に、メンバーがマネジメントを面白がってくれるようになったことが嬉しかったとセルジオさんは言う。
  • 事業多角化においては、事業チームごとの自律性を維持しながらも、組織のナレッジや通底するエッセンスがしっかりと共有する必要があり、その両立が成功の鍵を握っている。マネーフォワード のデザイン組織では、こうした”横串”の支援の一環として『Design Ops』が設けられ、デザイナーがそれぞれの事業へのコミットする縦の動きと、マネーフォワードのデザイナーとしての成長を支援する横の動きの両方をバランスよく機能させている。その秘訣についてセルジオさんは、何より現場に対する解像度を上げていくことが大切だと語る。
  • 最後の話題は経営チームづくりについて。特に「経営人材」の育成はマネーフォーワードのような多角化戦略企業にとっては重要な課題である。セルジオさんはデザイナーも経営に参画可能であり、むしろ職業柄得意とする「具体と抽象を行き来する思考」は経営にも強く求められるものだ話す。また、その思考を伸ばしていくための営みとして、ロードマップや中期経営計画をつくる中で行われる対話がやはり重要なのだという。

CCMでプロジェクトを分析する

  • 今回のプロジェクトをCreative Cultivation Model(CCM)を用いて振り返る。最初に取り組んだ評価制度・能力定義は、事業多角化によって一元的な評価が難しくなる中で、変化に適合させるかたちで組織構造を修正したケースといえる。
  • 次のフェーズで実施したマネジメント研修は、新設された評価制度・能力定義に基づきながら、そうした個人の資質を支える組織文化や職場風土にもアプローチした。結果的に「マネーフォワードのマネージャーとしてのあり方とは?」や「我々は何者なのか?」といった問いを通じて、組織アイデンティティについて探究し、理解を深める学習の機会となった。
  • また組織横断的にデザイナー全体を支えるDesign Opsや、最後に語られた経営チームづくりに向けた取り組みは、経営人材には組織を俯瞰的に見て、不整合が発生している箇所をつぶさにチェックし、整合性を取り続けていくという営みをセルジオさんが行っているとも言える。しかし、変化し続ける組織においては、完璧な状態など存在せず、常にどこかに矛盾や葛藤を孕むものである。現代組織においては、そうした矛盾や葛藤を含め、変化と向き合い続ける姿勢が重要だ。

【関連動画】
CCMの詳しい解説については、こちらの動画をご覧ください。

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ラップアップ

  • プロジェクト全体を振り返って、セルジオさんはミナベがコンサルタントでありながら、解決策を押し付けるのではなく、組織の内側に入り込み、他のメンバーとの対話の場を醸成しながら、「みんなで考える」機会をつくっていたことについて触れ、「東洋医学的な(組織づくりの)アプローチだった」と述べる。
  • 人間も組織も、時間とともに自然と変わり続けるものである。だからこそ不整合は必ず起こるものであり、その変化をつぶさに捉え、解釈し、必要に応じてバランスを取り続けることが求められる。よりよい組織づくりを冒険的かつ共同的に、諦めずに行っていくことが肝要である。

動画内コンテンツ出典:

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映像撮影・編集:山崎 拓也

出演者

原 申
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原 申X(Twitter) / note
株式会社MIMIGURI 執行役員COO

2005年マクロミル入社。 営業から営業企画、営業部長、人事責任者、PMI、管理本部長、新規事業開発室長など複数の部門を統括。 2014年よりグループ執行役員、ニューロマーケティングのCentan代表取締役副社長に就任。 2019年9月に退任し、製造業の受発注プラットフォームを展開するスタートアップCADDiにジョイン。ビジネスオペレーションリード、営業企画の立ち上げ等を経て、2021年よりHead of HR。その後2年弱で約80名の組織を650名規模まで拡大させ事業のブリッツスケーリングを実現。2023年4月より現職。

伊藤 セルジオ 大輔
伊藤 セルジオ 大輔

株式会社マネーフォワード グループ執行役員 CDO(Chief Design Officer)

2003年にフリービット株式会社に入社し、CEO室にて広報、ブランディング、事業戦略などを担当。2006年に同社を退社し渡米。ニューヨークにてアートを学び、フリーランスデザイナーとなる。2010年に帰国し、デザイン事務所である株式会社アンの代表を務める。2013年度グッドデザイン賞受賞。2019年からは、株式会社マネーフォワードのデザイン戦略グループのリーダーを務める。2020年、同社CDOに就任。