チームの限界を超えた学習を生み出すには?:“二重編み構造“による実践共同体の活用

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約48分

CULTIBASEが提唱する「冒険的世界観」に基づく組織づくりにおいては、まず変化の激しい時代・環境に対して、チームや組織でコトを推進すること。また、その過程で一人ひとりが学び、同時に集団の中でも学びが生まれる状態を、目指すべき組織のあり方のひとつとして掲げています。

ヒトと組織に強い経営人材になるための『新時代の組織づくり』

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このような組織を目指していく上で、学習科学およびナレッジマネジメント等の観点から重要な示唆を与えてくれるのが「実践共同体」「二重編み組織」の概念です。

実践共同体は、「あるテーマにかんする関心や問題、熱意などを共有し、その分野の知識や技能を、持続的な相互交流を通じて深めていく人々の集団」などと定義されており、経営の領域ではナレッジマネジメントやイノベーション創出の基盤として期待されています。

一方「二重編み組織」とは、この実践共同体と公式組織(チーム)の二重構造のことを指します。近年では、この「二重編み組織」を組織内に取り入れることで、より大きな効果の創出が期待されています。

そこで今回は、「二重編み組織についての一考察」松本雄一(2012)と「経営学における実践共同体研究の展開と展望」今井悠資, 松本雄一(2024)という2本の論文を紹介しながら、「二重編み組織ならではの学習とは何か」「チームの限界を超えた学習を生み出すには?」といった問いについて考えていきます。

「チームの限界を超えた学習を生み出すには?:“二重編み構造“による実践共同体の活用」のチャプター

06:48 そもそも「実践共同体」とは何か?
22:36 実践共同体4タイプ
26:37 二重編み組織とは何か?
33:57 二重編み組織をつくることの意義

「チームの限界を超えた学習を生み出すには?:“二重編み構造“による実践共同体の活用」のポイント

■実践共同体とは何か

  • MIMIGURIのリサーチャーの古今東南、「組織論に関する、今注目すべき文献」をアノテート(注釈づけ)していく本番組。今回のテーマは「実践共同体」と特に「二重編み組織」という理論について、次の2本の論文をもとに深堀りしていく。
    「二重編み組織についての一考察」松本雄一(2012)
    「経営学における実践共同体研究の展開と展望」今井悠資, 松本雄一(2024)
  • 東南は研究者としてのキャリアの初期の関心はこの「実践共同体」であり、経営に関わる人、組織で働く人にとっても、一人ひとりが学び、チームや組織全体として学びを生み出していく上でのヒントになると考えたと語る。実践共同体でよく使われる定義は下記の通り。
  • 実践共同体は元々「社会的に埋め込まれた状況によって人は学びを深める(Lave&Wenger,1991)」という学習の考え方に基づき提唱された概念である。1990年代にそれ以前の学習を頭の中で起こるものと捉える考え方(認知主義)から、学習を”社会的営み”と捉える状況的学習論が盛んに論じられるようになった。
  • 初期の実践共同体に関する議論においては、下記のステップで共同体への参加を深め、同時に学習も促進されていくと考えられた。こうした議論が発展し、現代ではナレッジマネジメントやイノベーション創出、キャリアの確立など「実践共同体による成果への評価」についても幅広く議論が行われるようになった。
  • また、経営学における応用も進んだ。「(会社などの)公式組織がいかにして良い実践共同体を生み出すか」ということを中心に議論が重ねられた。しかし、こうした動きに対する批判も大きく、特に「他のタイプの集団との弁別が困難であること」「(他の領域に応用するにあたって)根本的な概念要素が捨象されているのではないか」という2点がよく指摘された。
  • 後者の観点は先述の定義でも問題視されており、そのため今井・松本(2024)は実践共同体を「ある状況に置かれた人々が共通の目的、関心のために特定技能の向上や知識の創出、そしてアイデンティティの形成を行う集団」と定義し直している。
  • 今井・松本は実践共同体を下記の4つの種類に分類している。
  • まず図上部に組織内の実践共同体が2種類位置している。制度的実践共同体は「従業員が否応なく参加する過程が含まれる」ことが主な特徴である。潜在的実践共同体は個人の動機に基づいた自発的な活動でありながら、「実践が必ずしも組織から知覚されているとは限ら」ず、そのため「実践の正当性が組織で共有されない場合もある」という。
  • そして図下部の2種類は組織外の実践共同体である。外部連携実践共同体は、例えば同業者間の業界団体や、共同プロジェクトなどが該当し、組織成果に関する実践を行うことが特徴とされる。最後の独立実践共同体は、組織的な制約がないことが特徴として挙げられ、個人的な自発性に基づくものが対象となる。

■二重編み組織とは何か

  • 実践共同体の関連概念の中でも、経営学において関心を集めるのが「二重編み組織」である。その前段として、松本(2012)では、実践共同体の大きな特徴として「価値によって動かされる」こと、「知識によって定義づけられる」こと、「有機的な発展」、「アイデンティティによる結束」があり、その点で一般的なチームとは異なるものと位置づけている。
  • 二重編み組織とは、実践共同体と公式組織(チーム)の二重構造のことを指す。この構造によって、2種類の集団を往復しながら、学習のサイクルを生み出すことが可能になるという。
  • 二重編み組織と似た組織構造のひとつにマトリクス組織があるが、二重編み組織の場合「知識に焦点を当て、異なる組織構造を組織にもたらす」という点でマトリックス組織と異なっているという。

■二重編み組織をつくることの意義

  • 東南は先行研究から、二重編み組織をつくることの意義について下記の3つを挙げる。また、自身の考えとして、それぞれを組織内で実践するためのポイントを解説した。
  • 東南は比較的公式性の強い制度的実践共同体について、唯一、二重編み組織の両立が難しいタイプだとしながら、チームのリーダーとは別に、コーディネータの役割を担う人を配することによって可能になるのではないかと仮説を述べる。実践共同体におけるコーディネータとは、集団の中核にコミットし、重要な問題の特定や、メンバーの成長などにコミットする人のこととされている。
  • 最後に東南は、公式組織(チーム)という形態が得意とすることと、実践共同体という形態が得意とすることに違いがあることから、働き方やそれに伴う学び方が多様化するいま、成果と学習の高いレベルでの両立が求められるのは必然であり、そのための考え方として二重編み組織が効果的ではないかと締めくくった。

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出演者

リサーチャー / ファシリテーター

立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科博士前期課程修了。立教大学大学院経営学研究科博士後期課程在籍。人と組織の学習・変容に興味を持ち、組織開発が集団の創造性発揮をもたらすプロセスについて研究を行っている。共著に『M&A後の組織・職場づくり入門:「人と組織」にフォーカスした企業合併をいかに進めるか』がある。

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