7/10に開催されたイベント「問いかけの作法:チームのポテンシャルを活かす技術」のアーカイブ動画です。本イベントでは、CULTIBASE編集長・安斎勇樹が現在執筆中の書籍『問いかけの作法(仮)』の内容をもとに、チームのポテンシャルを引き出す「良い問いかけ」の基本的な原則について整理するほか、実際にコミュニケーション場面で「問いかけ」を機能させるための「問いかけの作法」について、3つのフェーズに分解しながら実践的に解説しています。
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<今週のポイント>
・人間には高い環境適応力があり、必要な認知的処理を自動化したり、深く理解していない他者とでもコミュニティを形成したりすることができる。これらは社会生活において必要不可欠なものであるが、「相手を『わかったつもり』になり、それ以上の期待をしなくなる」など、チームが停滞する諸問題を引き起こすことがある。
・それらを要因ごとに整理すると、人間は自身の優れた環境適応能力によって、「認識の固定化」「関係性の固定化」「衝動の枯渇」「目的の形骸化」という4つの病をチームで引き起こしていることがわかる。そして、これらの病に対する処方箋として、「問いかけ」の工夫が効果的である。
・問いかけとは「同期型のコミュニケーションにおいて、相手に『質問』を投げかけること」。問いかけとは、未知数を照らす「ライト」のようなものであり、どの未知数にライトを当てるかによって、促される「反応」は変わる。
・問いかけの基本定石としては、まずは「意見」が出やすくなる問いかけを増やす。その際「相手のこだわりに焦点を当て、個性を尊重する」「適度に制約をかけ、考えるきっかけをつくる」「いつもと少し違った切り口から、思考を揺さぶる」の3つのポイントを意識し、工夫するとよい。
・問いかけの作法の全体像は「見立てる(相手や場の状況を理解する/投げかけた質問の反応を確認する)」「問いを練る(変化を生み出す質問を作成する)」「投げかける(適切な投げかけで反応を促進する)」の3つのサイクルによって構成される。特に最初の「見立てる」は見落とされがちだが非常に重要な観点であり、「良い問いかけはよく見ることから始まる」と安斎は述べる。また実力のあるファシリテーターにも、観察力の重要性を語る人は多い。
・しかしながら、観察力の重要性を強調しすぎることのリスクもある。代表例としては、「関係ないので、無視してよいこと」を判断できない人工知能上の「フレーム問題」に近い状況に陥ってしまうことが挙げられる。また知識も必要であり、一次情報から妥当な判断を下すためには、何かしらの判断の枠組みが必要である。
・そのため、観察力を磨く上では、”卓越した観察眼”をいきなり発揮しようとせず、現実的かつ有効なやり方として、「(1)チームの諸問題のチェックリストを参照」「(2)手がかりを収集」「(3)暫定の仮説を立てる」というプロセスを意識し、まず問いかけてみて、外れていれば修正していくことで、効果的に「良い問いかけ」にたどり着くことができる。
・「問いを練る」「投げかける」の作法は現在作成中だが、「仮定法」「前提確認」「限定法」などがパワフルな問いかけをつくるパターンとして仮説的に提唱されている。
美しさと向き合う活動から始めることは不可欠である。
本イベントでは、昨年発売された安斎による共著『問いのデザイン: 創造的対話のファシリテーション』の実質的な“続編”として現在執筆中の『問いかけの作法』の内容をもとに、安斎が90分丸ごと講義を行っています。『問いのデザイン』でもチームの創造性を阻害する要因として掲げられていた「認識の固定化」と「関係性の固定化」の問題に対して、前著の理論に基づきながら異なる観点からのアプローチを試みており、よりチームの個別具体的なコミュニケーションに寄り添った内容になっているように感じました。
安斎自身は“生煮え“と表現する今回の内容ですが、チームの意見を引き出し、活性化させるための視点の置き方やプロセスに関する理論の解説を中心に、明日からの会議で気軽に試せる工夫なども紹介されているので、ぜひ今回の内容をもとに試行錯誤しながら、自分自身や、所属する組織に合ったやり方を探索してみてもらえればと思います。
チャプター
00:11 イントロダクション(イベントの趣旨・登壇者紹介)
11:13 「問いかけの作法」が生み出すチームワークの好循環
20:45 チームを停滞させる、人間の環境適応能力の「副作用」
46:23 問いかけの基本定石
58:31 チームの諸問題を打破する「問いかけの作法」とは?
1:17:51 見立ての作法:簡易診断のチェックポイント
1:23:52 「問いを練る」「投げかける」の作法:パワフルな問いの6パターン
1:34:01 ラップアップ・アフタートーク(質疑応答)