“弱さ”から世界を変える?「ゆるスポーツ」に学ぶ、矛盾を遊ぶ思考法

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約104分

舘野 泰一
舘野 泰一
安斎 勇樹
安斎 勇樹
猫田 耳子
猫田 耳子
澤田 智洋
澤田 智洋

5/13(土)に開催した「“弱さ”から世界を変える?「ゆるスポーツ」に学ぶ、矛盾を遊ぶ思考法」のアーカイブ動画です。本イベントでは、書籍『マイノリティデザインー弱さを生かせる社会をつくろう』の著者である澤田智洋さんをゲストにお迎えし、パラドックス思考の”葛藤から生み出される創造性“の観点から、”弱さ”や”矛盾”から世界を変える思考法と関わり方を深堀りしました。

チャットログはこちら

「“弱さ”から世界を変える?「ゆるスポーツ」に学ぶ、矛盾を遊ぶ思考法」のチャプター

08:52 チェックイン:あなたが自分の『弱さ』だと思うことはなんですか?
16:01「マイノリティデザイン」とは何か?
22:27 澤田さんが「マイノリティデザイン」に関心をもったきっかけ
30:39 ゆるスポーツとは何か?
41:57 マイノリティデザインの「推しポイント」と「パラドックス思考」との共通点
47:50「組織とマイノリティデザイン」を捉える
53:46 Paradox Driven Creationをより体系化するためには?
01:10:53 「諦めるけど、諦めないリーダーシップ論」として何ができるか?
01:18:51 私自身の中にある弱さとどう向き合うか
01:37:41 弱さを持ったこと組織という矛盾を止揚できる組織になるには

「“弱さ”から世界を変える?「ゆるスポーツ」に学ぶ、矛盾を遊ぶ思考法」のポイント

  • 書籍『マイノリティデザインー弱さを生かせる社会をつくろう』の著者である澤田は、「マイノリティデザイン」とはマイノリティーの方を起点に社会の方をデザインし直していくという手法だと語る。人を魚に、社会を水に例えると、魚が水に合わせるのではなく魚に合わせて水を変えていくという考え方がマイノリティデザインであり、全ての人が水を得て魚になるというシーンを頻繁に目撃していると澤田は語る。
  • 元々広告業界で仕事をしていた澤田は、第一子である息子が視覚障害、知的障害、自閉スペクトラム症を持っていたことで、クリエイティブディレクターとして培ったことを彼に還元できないかと思案する。そこで、澤田は障害をもつ当事者の方やそのご家族の方々200人にヒアリングを重ねた結果、現在マジョリティに受け入れられているライター、曲がるストロー、タイプライターは元々はマイノリティの方のニーズから生まれたことを知り、福祉自体に興味を持つようになったと述べる。
  • マイノリティデザインの思考で、裏表のない服や、ボディシェアリングをコンセプトにしたロボットNIN_NINの開発等を行っているが、澤田が最近特にリソースを割いているのがゆるスポーツだという。マイノリティデザインの思考を反映した新しいスポーツを発明しており、これまで115競技ほどが新たに誕生したと語る。たとえば、心疾患の少年と開発した「500歩サッカー」は1人500歩しか動くことができないサッカーで、障害のある人のみならず、運動が苦手だったり体力が落ちている人も楽しめると語る。
  • 澤田の話題提供を受け、舘野は「マイノリティデザイン・弱さを活かせる社会をつくろう」を読み解くというテーマで話題提供を行った。舘野は、マイノリティデザインの「推しポイント」と「パラドックス思考」との共通点として、①脱「筋トレ」アプローチ②「絶望」と「希望」の両立③「感情」に着目した思考法 の3点をあげる。
  • ①脱「筋トレ」アプローチに関しては、苦手を克服するというアプローチではなく、苦手であってもスポーツの楽しみを味わえる方法はないのかを考えるアプローチだと述べる。パラドックス思考矛盾する感情をなくすというアプローチではなく、2つの感情があるという前提でどうバランスを取るかを考えるように、埋めるではなく活かす、除去ではなくバランス、が共通していると指摘する。
  • ②「絶望」と「希望」の両立に関しては、諦めるけど諦めない思考法だといい、スポーツが苦手であることは受容し諦めるものの、スポーツを楽しみたいことは諦めず編集可能なものとして捉えられると述べる。
  • ③「感情」に着目した思考法については、「感情」をMIXすることで創造性が発揮できるのではないかと語る。ゆるスポーツの背景には「楽しくて面白そう」だけど「強い怒り」を含むと述べ、原動力としての怒りがあるが、その中に楽しさと面白さっていうことがミックスされることによって、魅力を引き出しながらも、ある種それぞれの感情の副作用を軽減していくのではないかと語った。
  • 舘野は、組織においてもマイノリティデザインを応用できるのではないかと語り、たとえばリーダーシップにおいても全部の要素をもっているリーダーはいないが「何を諦めて、何を諦めないのか」を考えることが重要だと語った。
  • 安斎は、「諦めるけど、諦めないリーダーシップ論」として、矛盾してしまう際に両方を正当化できる言い訳としても、軸となるコンセプト(例えば安斎の場合は「衝動」や「創造性」であり、澤田の場合は「ゆる」など)を自分の中に持っておくのが大事だと語る。
  • パネルディスカッションにおいては、私自身の中にある弱さとどう向き合うかという問いに対して、押田はこれまで弱さは自責でしか捉えられなかったが他責という観点も持ち得たのが発想の転換だと述べる。弱さの中には変えられるものもあるかもしれないけが、変えることができない弱さに対しては、社会の側を変えることもできると考えられることで可能性は広がるとかたった。
  • 猫田は、他責と自責も二者択一ではなく、例えば社会側が変わるとなった際も自分は変わらないではなく、みんなが変わる一員としてちゃんと私もそこに位置づけられるといった捉え方もできるのではないかと語った。

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出演者

舘野 泰一
舘野 泰一

1983年生まれ。青山学院大学文学部教育学科卒業。東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学後、東京大学大学総合教育研究センター特任研究員、立教大学経営学部助教を経て、現職。博士(学際情報学)。専門はリーダーシップ教育。近著に『パラドックス思考 ─ 矛盾に満ちた世界で最適な問題解決をはかる』『これからのリーダーシップ 基本・最新理論から実践事例まで(共著)』(日本能率協会マネジメントセンター)など。

安斎 勇樹
安斎 勇樹

株式会社MIMIGURI 代表取締役Co-CEO

東京大学大学院 情報学環 客員研究員

1985年生まれ。東京都出身。私立武蔵高校、東京大学工学部卒業、東京大学大学院学際情報学府博士課程修了。博士(学際情報学)。株式会社MIMIGURI 代表取締役Co-CEO/東京大学 特任助教授。

企業経営と研究活動を往復しながら、人と組織の可能性を活かした新しい経営・マネジメント論を探究している。主な著書に『問いのデザイン』、『問いかけの作法』、『パラドックス思考』、『リサーチ・ドリブン・イノベーション』、『ワークショップデザイン論』『チームレジリエンス』などがある。

https://x.com/YukiAnzai
https://note.com/yuki_anzai
https://voicy.jp/channel/4331
http://yukianzai.com/

猫田 耳子
猫田 耳子

好きだなあと思うひとたちの叶えたい夢や作りたい未来への力になりたいなと思っています。そんな感じでミミグリにいます。

澤田 智洋
澤田 智洋

コピーライター/世界ゆるスポーツ協会 代表理事

1981年生まれ。幼少期をパリ、シカゴ、ロンドンで過ごした後17歳の時に帰国。2004年広告代理店入社。映画「ダークナイト・ライジング」の『伝説が、壮絶に、終わる。』等のコピーを手掛ける。 東京2020パラリンピック閉会式のコンセプト/企画を担当。2015年に誰もが楽しめる新しいスポーツを開発する「世界ゆるスポーツ協会」を設立。 これまで100以上の新しいスポーツを開発し、20万人以上が体験。海外からも注目を集めている。 また、一般社団法人 障害攻略課理事として、ひとりを起点に服を開発する「041 FASHION」、視覚障害者アテンドロボット「NIN_NIN」など、福祉領域におけるビジネスも多数プロデュースしている。著書に「ホメ出しの技術(宣伝会議)」「マイノリティデザイン(ライツ社)」「ガチガチの世界をゆるめる(百万年書房)」。