WHYなき”タスク指令マネジメント”を抜け出すための処方箋
WHYなき”タスク指令マネジメント”を抜け出すための処方箋

WHYなき”タスク指令マネジメント”を抜け出すための処方箋

2022.11.18/5

「メンバーが主体性を発揮してくれない」
「チームの関係性が冷え込んでいる気がする」

このような問題に直面しながらも具体的に何が課題なのかわからないケースは多々あります。今回は過去にCULTIBASE Radioで配信された配信された内容をもとに、そうした硬直化の一因となる、過度な”タスク指令マネジメント”について考え、”WHYをわかちあい、タスク指令マネジメントを抜け出すための組織デザイン”の方法論について、株式会社MIMIGURI代表取締役 Co-CEO・ミナベトモミによる解説をもとに、知見をお届けします。

■「組織デザイン」の基礎解説はこちら

“タスク指令マネジメント”がもたらす弊害

“タスク指令マネジメント”とは、マネージャーが目標達成のために業務管理をするにあたって、メンバーにタスクを渡すにとどまり、そのタスクを行う理由(=WHY)が全く伝えられないようなマネジメントの状況を指します。

複数の人数の業務を効率よく進めるために、マネージャーが目標からタスクに落とし込みメンバーに共有する、というのは合理的に思われるかもしれません。一方で、タスクを与えられたメンバーにとっては、ただタスクを与えられているだけでは、「このタスクがなぜ必要なのか」「このタスクを行うことで、何の役立つのか」がわからないままとなってしまい、不信感に繋がりかねません。また、WHYが共有されていないがために、どのような行動・成果がチームにとって良いのかもわからず、その結果、マネージャーからは「うちのメンバーは受け身で主体性がない」と見られ、やる気を失ってしまうケースもよく見受けられます。

そうした状況を防ぐためには、「マネージャーがWHYを語ること」「HOW(=具体的な方法)をどこまで規定して渡すかの調整をすること」が重要です。

また、この2点を達成するためには、喫緊のタスクにとらわれるのではなく、「短期」「中期」「長期」の3つの時間軸で、WHYとHOWの関係性をコントロールする必要があります。

組織内に定着した”タスク指令マネジメント”は、ある種の慢性的な病のようなものです。そのため、「短期」の対処では一時しのぎにしかなりません。完全に抜け出すためには、中・長期を見据えた対処を組織内で習慣化する必要があります。本記事では、対処療法としての短期スパン(〜3ヶ月)の取り組みから、根本的に組織から”タスク指令マネジメント”をなくすための中・長期(数ヶ月〜10年)的な取り組みについて紹介します。

短期スパンの処方箋:ビジョンの制定

まず「短期」で”タスク指令マネジメント”からの時間軸で心がけるべきポイントは、「ビジョンの策定」です。具体的なポイントとしては、

(1)チーム全体でコミットする目標を明確にする
(2)メンバーの役割を明確にする
(3)メンバー同士の協力関係をつくっていく

の3つがあります。

各人の個別パフォーマンスの向上にだけフォーカスするのではなく、チームの目的を明確にし、関係性を築きながらチームとして目標に向き合う状況をつくることが大切です。

コミュニケーションを取る際にも、個々人のタスクを管理する”締め切りチェッカー”になるのではなく、チームビルディングや、チームの目標と各自のタスクの”紐づきチェッカー”として関わり、チームとして協働して目標に向かう状態に調整し続けることが肝要です。

メンバーとマネージャーとでは、役割や個性の違いから、持っている情報や見えている景色、そして何を大事にするかといった価値観が異なります。こうした差異を前提とした上で、個人の特性がチームとしての目標達成に活きるようなタスクの渡し方を意識するとよいでしょう。

こうした関わり方については、下記の記事でも詳細に記述されています。

また、メンバーの個人的なこだわりやまなざしを把握し、チームの成果に活かすための技術として、CULTIBASE編集長・安斎勇樹による書籍『問いかけの作法』の内容が参考になります。有料会員制オンラインプログラム『CULTIBASE Lab』では、『問いかけの作法』の内容を約100分にわたって著者自ら解説する動画を公開中です。関心のある方はぜひこちらもチェックしてみてください。

中期スパンの処方箋:ビジョンへのロードマップの作成と共有

中期スパンの処方箋は、「ビジョンへのロードマップの作成と共有」です。

何人もメンバーを抱えるチームをマネジメントする上では、個別のタスクマネジメントにリソースを取られすぎると、全体観を見失い、なぜそれをやっているのかがわからなくなってしまうことがあります。そうした事態を避けるためには、1〜3年先に向けた目標設計やそれに対する道筋を設計し、未来に対する納得感や理解度を高める必要があります。

そうした中で有効な方法として挙げられるのが、中期ロードマップを描くこと。3年後にたどり着いていたい状態を明確にイメージし、そこから逆算して今の取り組みを捉える目線をいかに共有できるかがポイントとなります。

しかし、ロードマップにはいろんな変数が含まれるため、その設計は決して容易ではありません。事業や業務の成果目標、チームのあり方、環境設計など、多様な観点が存在する中で、どこから手を付けていくべきなのか、わからなくなることも多々あります。

そうした状況下においては、まずは落ちついて現時点で確定している情報を整理し、確定している情報を軸(センターピン)としながら、周囲の必要な情報を埋めていくと効率的に設計できます。また、ロードマップ自体も固定的なものとせず、状況によって変化するものであるという前提をチーム内で共有することも大切です。状況の変化に応じた時にチームとして未来をどう捉えるか、対話を通じて認識を揃えていくことも、長い組織・チーム活動においては不可欠な取り組みだと言えます。

またロードマップを作成するという取り組みの中で、事業・組織のビジョンを策定したとしても、そのビジョンが自身の将来ありたい姿や獲得したいスキルが結びついていなければ、自身が関わる意義が薄れてしまい、メンバーのやる気を削いでしまいます。以下の記事では、組織としてのビジョンと、個人の望ましい未来が合致するためのポイントを紹介しています。

長期スパンの処方箋:ロードマップを実現する事業目標と組織構造の一致

長期的にロードマップを運営していくためには、その母体となる事業や組織の状態も、適したものである必要があります。ロードマップの目標を達成する実行役は組織であり、組織のデザインがうまくいかなければ、目標の達成はうまくいきません。その際の組織デザインにおいては、事業構造と組織構造を一致させることがポイントです。

例えば、よくあるバッドパターンとして、チームとしてひとつになることにこだわりすぎるあまり、セールスの発注目標の一部をコントロール権のない開発チームが担ってしまっているといった事例が挙げられます。事業としてあるべき姿と、チームの目的や個人の役割とが噛み合わなくなることで、コミットすべき目標がわからなくなってしまうのです。そうした状態を回避するには、事業及び組織のアーキテクチャを揃えることが求められます。

次の記事では、そのような組織デザインの考え方について、「コンウェイの法則・逆コンウェイの法則」などの概念をもとに実践知を紐解いています。

また、KPIツリーなどの手法で役割分担を明確にする際も、「事業のKPIツリーの分担」「担当するKPIの役割」「役割のワークプロセス」が一致している状態を目指すことが肝要です。大きな組織になればなるほど、事業構造と組織構造が一致しないことが多く、組織構造上の目に見えない負債がいつの間にか溜まってしまいがちです。両者のアーキテクチャを一致させるためには、事業責任者のみならず、事業構造と組織構造との接続を注視する人の存在が、成功を大きく左右します。

組織内外の状況が絶えず変化する中では、「人」と「事業」の関係性を俯瞰し、必要に応じて調整を行いながら適した状態を維持するためのファシリテーションの技術が求められます。以下のコンテンツでは、その一例としてCHRO(最高人事責任者)やHRBP(HRビジネスパートナー・戦略人事)が総合的な観点から組織としての仕組みづくりを推進する体制づくりのナレッジについて解説しています。

本記事では、「タスク指令マネジメントを抜け出すためには?」という問いを入り口に、ミクロな関係性構築からマクロな組織デザインまで、幅広く知見を紹介しました。組織デザインとは、一つの方法論で完結するものではなく、事業・組織・人の状態を多角的に捉えていく姿勢が求められる営みであり、今回紹介したもの以外にも無数の考慮すべきポイントが存在します。CULTIBASE Labでは、下記のコンテンツをはじめ、組織デザインについて学べるコンテンツを多数発信中です。継続的に学びを深めていきたい方は、ぜひこの機会に入会をご検討ください。

また、短期集中的に組織デザインについて学びたい方は、CULTIBASE Schoolの「組織デザインコース」がオススメです。下記サイトよりご登録いただいた方を対象に募集状況をメールでお知らせいたしますので、合わせてチェックしてみてください。

▼CULTIBASE School
https://school.cultibase.jp/


本記事は、過去に配信した下記のRadioコンテンツをベースに構成しています。

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テーマごとにコンテンツを厳選してまとめました。

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