個の総体として立ち現れる「創発」とどう向き合うか?|CULTIBASE Radio|Facilitation #27
個の総体として立ち現れる「創発」とどう向き合うか?|CULTIBASE Radio|Facilitation #27
/約20分
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CULTIBASE Radioは、人やチームの創造性を高める知見を音声でお届けします。 CULTIBASE Radioファシリテーションの27回目では、株式会社MIMIGURIのでFacilitatorである渡邉貴大と、同社のDirector/Facilitatorである田幡祐斤が、「個の総体として立ち現れる『創発』とどう向き合うか?」をテーマにディスカッションしました。(前編はこちら

  • 今回も、前回に引き続き、MIMIGURIから田幡祐斤をゲストに迎えて、ファシリテーション観と技能に迫る。前回、田幡は自身のキャリアについて、場・組織・社会のデザインへと拡張する中で、ルーツに回帰しているように感じると語っていた。
  • 田幡はここ最近、大学生時代に研究で扱っていた生態学や生物学のアナロジーを使うことが増えてきたと語る。その理由について、人間を生き物の群れとして見つめているような向きが自分の中で強まってきている感覚があると田幡。人間以外の生物と人間を包括して捉えるマクロな視点と、組織内の人間に限定して捉えるミクロな視点も、スケールが違うだけで、相似関係にあると田幡は言う。そして自覚の有無に関わらず、個は常に全体の一部であり、そこには「創発性」があるのだと述べる。
  • たとえば、環境を破壊したいと思う個人はいないだろう。しかし、人類全体としては結果的に自然破壊を行い、その状態を維持している。これを日々の会議に当てはめてみるとどうだろうか。「発言してね」とマネージャーは言い、メンバーも発言が多くあるほうがよいことをわかっている。しかし現実には、発言のしづらさを抱えてしまう人が出てしまう。こうした個の総体が場全体に影響を与えていることを、田幡は「創発」のイメージとして語る。
  • こうした社会や環境といったマクロな場と、組織・チームといったミクロな場が相似関係であることは、田幡のファシリテーション観にどのような与えたのだろうか。
  • 上記の問いに答えるかたちで、田幡は自身のファシリテーションの芸風について、「全体性や創発性に目を向ける感覚がある」と言う。チームや場に対してメタ視点を持ち、もし全体にとってよいムードであると田幡が感じたなら、そのことを場にフィードバックし、「よい状態」に対する共通認識を適宜チーム内でつくっていく。ただし、よいムードを明確にハンドリングして創りたいわけではない。よいムードのパターンが増えるように、チームや場のあり方を問いなおすきっかけがつくれればよいのだと田幡は語る。
  • そのために田幡はどんな働きかけをしているのか。田幡は、俯瞰した視点を持ちつつも、1人の参加者として振る舞う、「当事者性」を大事にしていると述べる。一般的に、ファシリテーターは場において唯一無二の存在として見られがちだが、田幡は、それが画一的な”正しいものの見方”を押し付けるような関係にならないように注意し、同じ目線で発言をするように心がけているのだと言う。メタ的に全体のムードを捉えながら、当事者として振る舞うバランス感覚が、田幡が経験的に培ってきた実践知の核と言えるだろう。

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出演者

渡邉 貴大
渡邉 貴大

ファシリテーター

早稲田大学商学部卒業。規模/業態の異なる複数の組織において、人事やコンサルタントとして業務に従事。チェンジ・エージェントとして組織変革のファシリテーションを実践してきた。MIMIGURIでは個人と組織が自らの「story writer」となり、自分や自分たちの物語を紡ぐ機会を演出する組織・事業開発、イノベーションプロジェクトのPMとファシリテーションを担当している。

田幡 祐斤
田幡 祐斤

東京農工大学農学部卒業。奈良県立大学地域創造研究センター共同研究員。アパレル企業での販売/店舗マネジメント、研修会社でのコンサルティング/コンテンツ開発などの業務に従事後、2019年に前身であるミミクリデザインに参画。生態学、環境倫理学、文化人類学、教育学、心理学などを基に「人間にとっての自然さ(の回復)」を探究しながら、事業開発や組織開発のプロジェクトのファシリテーション及びその方法論の開発を行っている。元来、人間以外の生物が好き