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似ているカタチからインスピレーションを手に入れる:連載「アナロジー思考の秘訣」第4回
約5分
短期連載「アナロジー思考の秘訣」では、論理的思考では辿り着けない、飛躍した発想を得るための思考法「アナロジー思考(analogical thinking)」について、その特徴や手順について解説します。
「アナロジー思考(analogical thinking)」とは、考えたいアイデア(ターゲット)があったときに、似ている性質や構造を持った別の領域(ソース)から要素を借りてくることで、アイデアを発展させる思考法です。
前回の記事では、意味の類似性を起点に、アイデアをアップデートするアナロジー思考の方法を紹介しました。今回は、「仕様の類似性」からアナロジー思考を使う、ちょっと変わったアプローチを紹介します。
目次
カタチには、意味が込められている
カタチが似ているものを、意味の源泉とする
カタチには、意味が込められている
昨今「意味のイノベーション」に注目が集まっている通り、アイデアにおいて「どんな仕様か」よりも「それがどんな意味をもたらすか」のほうが重視される傾向にあります。
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たしかに仕様をミクロにアップデートすることよりも、仕様に込めた意味の解釈をアップデートするほうが、ユーザーにとってインパクトがあり、またROIも高い取り組みのように思えます。
筆者はいまから10年ほど前に、三谷宏治氏(K.I.T.虎ノ門大学院教授)と協働で、中学生を対象に、紙コップはなぜこのカタチなのか?よりよい形状の紙コップを考え、作ってみるワークショップを実施したことがあります。
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しかし代案を作ろうとすればするほど、実は「このカタチ」がかなりBESTであることに気付かされていきます。持ちやすさ、飲みやすさ、素材のコスト、スタッキングしやすさなど、総合的な利便性を実験しており、カタチに意味があったことに気付かされます。
そのようにして考えると、時計はなぜ丸いのか。パソコンのディスプレイはなぜ四角いのか。ドアノブはなぜあのカタチなのか。素朴な疑問の向こうには「そのカタチが、そのカタチである意味」が内在していることに気付かされます。
カタチが似ているものを、意味の源泉とする
仕様の類似性からアナロジーを考えるアプローチは、AとBのカタチが似ているのであれば、AとBに込められた意味もリンクするかもしれない、という信念に基づいています。このことは、なかなか頭で理解するのは難しいのですが、一度体感すると感覚的な回路が開通し、実感が得られます。
筆者は誰もがこの「仕様の類似性」に基づくアナロジーを体験できるように、英国ロイヤルカレッジオブアート(RCA)出身のクリエイティブユニット「Studio PLAYFOOL」と共同で「PLAYFOOL Workhop」というワークショップツールキットを共同開発しました。Studio PLAYFOOLは、もともとアナロジー思考を駆使したプロダクトデザインを得意としています。その思考プロセスの暗黙知を辿れるようにしたプログラムです。
PLAYFOOL Workhopには、合計4つのエクササイズを用意していますが、特に「仕様の類似性」に基づくアナロジー思考が鍛えられるのは「IMERGINE!」と名付けたさまざまなもののカタチが印刷されたオブジェクトレンズを用いたエクササイズです。
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オブジェクトレンズごしに世界を眺め直してみる
たとえば、以下のような「時計」らしきものが書かれたオブジェクトレンズを手にとって、あたりを見回してみます。いったんこのレンズが「時計」であること、つまり「込められた意味」は忘れて、とにかく「カタチが似ているもの」を、探索するのです。
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すると、たとえば以下のように、長針と短針がなしている角度が、たまたま椅子の背もたれと一致して見えて「カタチが似ている!」と気づくかもしれません。
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仕様の類似性をみつけたら、いよいよアナロジー思考の真骨頂です。ここで椅子は「ターゲット」であり、オブジェクトレンズの時計は「ソース」だと考えてください。ターゲットとソースの「仕様」が類似性で結合されたので、今度は、オブジェクトレンズ側の時計(ソース)の意味を、椅子(ターゲット)に付与して、アイデアへと転換するのです。
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たとえば、以下にように椅子の背もたれの角度が時間によって変動し、時刻によって姿勢が変化する「Time-To-Sit」というプロダクトアイデアが出来上がりました。
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実装にはさらなる検討が必要ですが、長時間仕事することができないため、もしかすると働き方改革に一石を投じるプロダクトになるかもしれません。
このように、仕様の類似性を起点にしながら、意味の再構築をすることも、アナロジー思考によるアイデア発想のひとつのアプローチです。発想が「意味」に縛られていると感じた際には、お遊びの感覚で一度試してみてください。
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