両利きの経営を実現する“越境学習”の実践とマネジメント

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約92分

3/26(土)に開催された『両利きの経営を実現する“越境学習”の実践とマネジメント』のアーカイブ動画です。ゲストに石山恒貴さん(法政大学大学院政策創造研究科 教授)をお迎えし、”越境学習“を組織のイノベーションに繋げるマネジメント論を探究しました。自社の垣根を超え、「外」に出ることで学びを得る活動の意義とは。

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チャプター
00:11 イントロ・チェックイン
13:43 前提解説:両利きの経営と組織学習
26:14 越境学習とはなにか
34:11 なぜ今、越境学習なのか・越境学習者は”二度死ぬ”
39:20 マネジメント側は越境学習者とどう向き合うべきか
48:33 越境学習者のネットワーク構築とマネジメント側の”見守り”の作用
59:45 越境学習を促す組織文化を作るには
01:12:41 考察・越境学習の正当性と有用性は誰が決めるのか
01:22:40 越境学習から生まれた組織学習の事例
01:28:10 ラップアップ・今後のイベントのご案内

今週のポイント
・「不確実性の時代」と言われる昨今、既存事業が成功している企業ほど、目の前の課題に目を奪われ、気づくと全く新しい価値観を持った新興企業負けてしまう。こうした問題に対し、既存事業を磨いて稼ぐこと(知の深化)と新たなの可能性を実験すること(知の深化)の両輪をまわす必要性を説いたのが「両利きの経営(ambidexterity)」である。
・「両利きの経営」は組織学習のプロセスとも捉えられる。目の前の業務を改善しながら既存事業の前提を問い直すことで、組織のルーティンが変わっていく。また、個人レベルでもこうした「両利きの学習」が重要だ。今回のイベントでは、組織の枠組みからはみ出て試行錯誤する「知の探索」として「越境学習」の可能性を探りたい。
・「越境学習」とは、居心地の良い「ホーム」と、居心地は悪いが刺激のある「アウェイ」の境界を行き来することである。自分にとって当たり前になっていた価値観が全く通じない(あるいは否定される)という経験を通じて、越境学習者は新たなアイデンティティを形成する。こうした経験は、組織の新たな可能性を模索する「両利きの経営」につながる可能性を秘めている。では、越境学習者と、彼らをマネジメントする側(経営・人事・上司・伴走者*社外コーチなど)は、組織内でどのように振る舞えば良いのだろうか。
・越境学習者は、社外のネットワークを維持しつつ、越境学習者同士の非公式なネットワークを築くことが重要だ。組織内に新しいルーティン(言葉・やり方)を少しずつ伝染させることで、越境で得た「非公式な知」を「公式な知」に転換できる。
・マネジメント側は、越境学習者に関与しすぎてはいけない。越境学習者が、「ホーム」「アウェイ」それぞれで困難に直面し、葛藤や違和感を感じること自体が、貴重な学習のプロセスだからだ。一方で、全く興味を持たないと、越境学習者のモチベーションが下がってしまうため、組織として従業員の越境を承認するような制度や直接的な承認があるとよい。
・また、上司が越境学習者である部下に嫉妬心を抱き、迫害してしまうケースもある。こうならないために、上司自身も越境学習に取り組むべきだ。
・個人が衝動的に「知の探索」を行い、共感した人々が非公式なネットワークを構築し、対話をすすめることで、徐々に経営層にも認知される。こうしたボトムアップ的なアプローチが、結果的に組織の「両利きの経営」に繋がるのではないか。

関連動画

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▼【外部記事】創造性は、人を理解し愛することから生まれる――インテージとMIMIGURIに通底する、組織の“野生”を育む思想とは。
https://mimiguri.co.jp/ayatori/intage-rdi/

出演者

安斎 勇樹
安斎 勇樹

株式会社MIMIGURI 代表取締役Co-CEO

東京大学大学院 情報学環 客員研究員

1985年生まれ。東京都出身。私立武蔵高校、東京大学工学部卒業、東京大学大学院学際情報学府博士課程修了。博士(学際情報学)。株式会社MIMIGURI 代表取締役Co-CEO/東京大学 特任助教授。

企業経営と研究活動を往復しながら、人と組織の可能性を活かした新しい経営・マネジメント論を探究している。主な著書に『問いのデザイン』、『問いかけの作法』、『パラドックス思考』、『リサーチ・ドリブン・イノベーション』、『ワークショップデザイン論』『チームレジリエンス』などがある。

https://x.com/YukiAnzai
https://note.com/yuki_anzai
https://voicy.jp/channel/4331
http://yukianzai.com/

石山 恒貴
石山 恒貴

一橋大学社会学部卒業、産業能率大学大学院経営情報学研究科修士課程修了、法政大学大学院政策創造研究科博士後期課程修了、博士(政策学)。NEC、GE、米系ライフサイエンス会社を経て、現職。人的資源管理、組織行動、越境学習、タレントマネジメント等が研究領域。日本キャリアデザイン学会副会長、人材育成学会常任理事、Asia Pacific Business Review(Taylor & Francis) Regional Editor、日本女性学習財団理事、産業・組織心理学会理事、人事実践科学会議共同代表、一般社団法人シニアセカンドキャリア推進協会顧問、NPO法人二枚目の名刺共同研究パートナー、フリーランス協会アドバイザリーボード、NPO法人CRファクトリー「コミュニティライフシフト」特別アドバイザー、専門社会調査士等。

主な著書:『定年前と定年後の働き方』光文社、『カゴメの人事改革』(共著)中央経済社、『越境学習入門』(共著)日本能率協会マネジメントセンター、『日本企業のタレントマネジメント』中央経済社、『地域とゆるくつながろう!』静岡新聞社(編著)、『越境的学習のメカニズム』福村出版、『パラレルキャリアを始めよう!』ダイヤモンド社、『会社人生を後悔しない40代からの仕事術』(共著)ダイヤモンド社

主な論文:The impact of knowledge brokering and role crafting on work engagement: a two-wave panel survey of older Japanese workers, Journal of Managerial Psychology, Vol.38,No.7,2023.

主な受賞:日本の人事部「HRアワード2023」書籍部門最優秀賞(『カゴメの人事改革』)、日本の人事部「HRアワード2022」書籍部門最優秀賞(『越境学習入門』)、経営行動科学学会優秀研究賞(JAASアワード)(2020)『日本企業のタレントマネジメント』、人材育成学会論文賞(2018)等